【2019年11月】上信電鉄で行く、城下町小幡と富岡製糸場を巡る旅

群馬のローカル私鉄、上信電鉄上信線を使って半日ぶらり旅を楽しみました。城下町・小幡と世界遺産・富岡製糸場を巡る旅。レトロな木造駅舎も必見です。

基本情報

上信電鉄上信線は、群馬県高崎市の高崎駅と、同県下仁田町の下仁田駅を結ぶ、延長33.7kmの鉄道路線。

社名及び路線名は、上野国(上州)と信濃国(信州)を結ぶ構想から名付けられたもの。現在の終点である下仁田から先は、実際には着工されることはなかったものの、荒船山を越えて現在の長野県佐久市中込まで結ぶ計画であった。

旅客輸送人員の内、定期旅客の比率が約7割と、通勤通学路線の性格が強いが、沿線には富岡製糸場をはじめ、今回訪問した小幡藩の城下町小幡や、こんにゃくの里下仁田などがあり、観光資源も比較的豊富である。

特に、2014年に同製糸場が「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産として世界文化遺産に登録されてから、国内外の観光客を呼び込もうと様々な取り組みがなされている。

旅行記

高崎駅の様子

高崎駅に降り立ったのは昼12時を過ぎてからのこと。11月三連休の中日、天気は快晴で絶好の旅日和である。

目指す上信電鉄乗り場は西口の地平にある。案内サインに従い足を進める。

上信電鉄乗り場への降り口

JR改札階からの階段を降りると、目の前に発車標と路線図、時刻表が目に入る。日中の発車間隔は概ね30~40分おき。

上信電鉄発車時刻表

もともとJRの1番線ホームであった通路を歩いていくと、上信電鉄の改札口がある。

上信電鉄乗り場

早速、きっぷ売り場で「一日全線フリー乗車券」を購入する。きっぷは横長の硬い券、いわゆる”D型硬券”と呼ばれるスタイル。日付押印器(ダッチングマシーン)の”カチン”という音が懐かしい。

きっぷ売り場(出札口)
一日フリー乗車券

フリー乗車券の運賃は大人2,260円。10月の消費税率変更に伴い値上げされたばかりなので、「運賃変更」の丸い印が押されている。

一角には、「高崎少年少女発明クラブ」の銘板が付けられた、沿線の見どころを紹介する展示物がある。

見どころ案内

”一押し”は、2017年にユネスコ世界の記憶に登録された「上野三碑」。日本に18例しか現存しない古代の石碑(7世紀 – 11世紀)の中でも最古の石碑群であるとのこと。それぞれ最寄りの駅から徒歩で行くことができ、また、3つの碑をめぐる運賃無料のバスも運行されている。

上野三碑めぐりバス案内

掲示版には、各駅の係員配置一覧表が掲出されている。思ったより有人駅が多い印象。

各駅係員配置時間一覧表

次の発車は12:53発下仁田行。まだ20分以上時間があり、折り返し列車も到着していないが、早めに入場する。

改札は、これまた懐かしい改札鋏によるパンチ。筆者もかつては改札鋏を扱った経験があるが、これが意外と難しい。間違えて指を挟んでしまうこともしばしば。

乗り場は”0番線”のみの1面1線。反対側のJR旧1番線側にも接しているが通常は使用されない。

高崎駅0番線

ホームの一番奥には「絲綢之間」と名付けられた”電車型待合室”がある。デハ203の廃車体を活用したもので、”電車型”というよりは”電車そのもの”だ。

電車型待合室

待合室内はオリジナルのロングシートとJR211系グリーン車の発生品シートが設置されている。説明板によると、この「絲綢之間」は群馬県立高崎産業技術専門校の訓練生により製作されたとのこと。

待合室内
説明板

12:49、下仁田からの上り列車が入線してきた。群馬県のマスコットキャラクターをあしらった500形「ぐんまちゃん列車」だ。

500系「ぐんまちゃん列車」

高崎~上州福島

12:53、折り返し下仁田行として定時発車。座席が3割埋まる程度か。昼時なので乗車率はさほど高くない。

比較的新しい駅、佐野のわたし駅を出ると、烏川を渡る。線路のすぐ下流側には、木造の「佐野橋」が架けられているが、今年10月に日本列島を襲い各地で大きな被害が発生した台風19号の影響により流されてしまった。

烏川

次の根小屋駅は、上野三碑の一つ「金井沢碑」の最寄駅。のぼり旗がはためき誘客している。

根小屋駅

終点下仁田は高崎の西方にあるが、このあたりでは列車は一旦南東方向に進む。窓越しに”裾野は長し赤城山”を望む。

赤城山

山名駅を発車すると、列車は大きく向きを変え西へと進んでいく。稲刈りが終わった田園風景の中を電車は進む。

山名-西山名間

上信電鉄に乗ると、他の鉄道では感じないある違和感に気付く。線路が曲がるときには、遠心力を押さえるために通常「カント」と呼ばれる傾斜が付けられているが、この傾斜が緩和曲線(直線と曲線の間に挿入する曲線のこと)に入る前の直線区間から派手に付けられているのが同社の特徴である。

列車交換が可能な木造駅舎の馬庭駅に到着。同社には雰囲気の良い木造駅舎が多く残されているので、駅舎ファンにとってはうれしい。

馬庭駅

馬庭を出ると、すぐに鏑川を渡る。この川とは終点の下仁田までお付き合いすることになる。

鏑川

上州新屋駅の手前で小さな川を渡る。この川は、この世とあの世の境を流れる”三途の川”ではなく、利根川水系一級河川「三途川」。近くには、三途の川を渡る罪人の衣服を剥ぐ”奪衣婆”を祀る「姥子堂」が建っている。

三途川(2017年撮影)

今日は良く晴れているので車窓から見える山々が美しい。榛名山、妙義山、浅間山、荒船山といった群馬の名峰を望む。

上州新屋-上州福島間

13:24、最初の下車駅、上州福島駅に到着した。

上州福島駅

レンタサイクルで城下町・小幡を巡る

上州福島駅は、駅から3km程南下した所にある城下町・小幡の最寄駅。所在地は甘楽郡甘楽町。

甘楽町案内図
駅舎内にある小幡の案内

駅舎は小振りな木造駅舎。美しく整備され好ましい佇まいの駅だ。

上州福島駅舎

この駅では、無料のレンタサイクルを借りることができる。駅の係員に申し出て、申込みノートに住所・氏名を記入し身分証明書を呈示する。

レンタサイクル

サイクリングのスタート。駅前からまっすぐ南に延びる道路を進む。2~3分で国道254号との食い違い十字路に出る。

国道との交差点

更に南下し10分程走ると、「雄川堰」が流れる小幡の街並みに到着する。道中は緩やかな上り坂で、運動不足の身にはやや辛い。

雄川堰の標識

堰を挟み車道と歩道が走る。葉がすっかり落ちてしまった桜並木を進む。春の花見の時期には大変賑わうそうだ。

桜並木

沿道には養蚕農家の街並みが続く。立派な蔵が往時の繁栄を物語っている。

養蚕農家の街並み
案内板
小幡八幡宮

堰には所々に洗い場が設けられており、街の人々の生活用水として活用されていることが分かる。

堰の流れ

途中に「信州屋」さんという、古民家を改装したカフェがある。ここは観光案内所を兼ねている。

信州屋

店内にお邪魔し、コーヒーを頂く。

信州屋店内にて

この雄川堰、技術的・社会的な価値と良好な保全状況が認められ、各方面から様々な認定を受けている。

雄川堰の認定証

信州屋の近くに、かつての繭倉庫を活用した「甘楽町歴史民俗資料館」がある。煉瓦造りの立派な建物だ。

甘楽町歴史民俗資料館

これから立ち寄る「楽山園」「長岡今朝吉記念ギャラリー」との共通入館券を購入(大人500円)。

女性職員が展示物について解説してくれた。ここ甘楽町は富岡製糸場の建設と関わりが深く、製糸場建物の礎石は、小幡の「連石山」から切り出されたとのこと。当時運搬に使った”車”が当館に展示されている。また、使われた煉瓦は深谷の瓦職人の手によって町内で生産されたが、その時に習得した技術が深谷の地で開花し、あの東京駅舎の煉瓦へとつながっているそうだ。

資料館から、城下町らしい武家屋敷が建ち並ぶ小道を自転車で5分ほど走ると、国指定名勝の庭園「楽山園」がある。この楽山園は、江戸時代初期に当時藩主であった織田信雄(信長の次男)によって造られた小幡藩邸の庭園だ。

楽山園入口

中心に「昆明池」と呼ばれる大きな池がある池泉回遊式の庭園。高台にある茶室から眺める景色は必見。

楽山園

楽山園の北隣には、美術館「長岡今朝吉記念ギャラリー」がある。この日は”人間国宝”須田賢司氏の木工芸品作品展が開催されていた。

長岡今朝吉記念ギャラリー

ギャラリーには居心地のよさそうなカフェが併設されている。

ギャラリー併設のカフェ

さて、時刻は15時を回った。そろそろ次の目的地、富岡製糸場に向かうことにする。陽が短いこの季節、すでに夕暮れが近づいている。

小幡は他にも見どころが多い。できればもう少し時間をかけて散策したい場所だ。

上州福島駅への帰り道から少し入った所、甘楽町役場の裏手にこんにゃくのテーマパーク「こんにゃくパーク」があるので寄ってみた。

こんにゃくパーク

ここの名物は無料のこんにゃくバイキング。夕方の時間帯にも関わらず行列ができていた。

無料バイキングの案内
園内の足湯

上州福島~上州富岡

上州福島駅に戻ってきた。自転車を返却し列車を待つ。

上州福島駅舎内

構内は島式ホーム1面2線と側線が1本。貨車と使われなくなった電車が留置されている。

ホーム

電車線の支持物は、”鉄道線”では珍しい「スパン線ビーム」方式。

スパン線ビームの電車線支持物

15:38発下仁田行列車がやってきた。同社最新鋭の7000形電車だ。

7000形

車窓を眺めるにはもってこいのセミクロスシート。空いているのでボックス席に座ることができた。

セミクロスシートの7000形車内

ホーム反対側の上り線には、JR東日本から移籍した700形電車が入線してきた。上越線、両毛線などで活躍した元107系電車だ。

6分程で富岡製糸場の最寄駅、上州富岡駅に到着した。

上州富岡駅に到着
上州富岡駅構内

駅舎は2014年に建て替えられた建物。2014年度グッドデザイン賞受賞の斬新な駅舎である。

上州富岡駅舎
駅舎と駅前広場

富岡製糸場を見学

駅から製糸場まで約500m。「まちなか周遊観光バス」が結んでいるが、すでにこの時間運行は終了していた。徒歩で10分程度、経路がやや分かりずらいので地図を手に歩いていく。

案内図

16:00、製糸場正門に到着。遅い時間帯なので混雑はしていない。入場料大人1,000円を支払う。

富岡製糸場正門

目の前に木骨煉瓦造の重厚な建物が目を引く。国宝の「東置繭所」だ。日本の木造建築と西洋の煉瓦造が融合した和洋折衷建築。

東置繭所
木骨構造が良くわかる

先ほど訪れた小幡で切り出された礎石が今も建物を支える。アクリルのカバーで厳重に保護されている。

礎石

隣の建物は国宝の「繰糸所」。その名の通り繭から糸を繰り出す作業場。製糸所の中心的な施設だ。

繰糸所入口

天井のトラス組が特徴的。この構造のおかげで中央部に柱の無い大きな空間を確保できる。

内部には1987年操業停止まで使用されていた繰糸器がそのままの状態で残っている。

繰糸所内部

奥の「西置繭所」は現在改装工事中のため立ち入り禁止であった。

1時間ほどかけ場内の施設を一通り見学する。あっという間に17時の閉場時刻となってしまった。

夕日に照らされた東置繭所

暗くなるとライトアップが始まる。冬の時期はライトに照らされた幻想的な姿を目当てに、遅い時間に訪れるのも良いかもしれない。

ライトアップ開始

時間になったので製糸場を後にする。正門の前には「上州名物 絹しゅうまい」の店があるので寄ってみた。

和風絹しゅうまいの信州屋

3個1皿で300円。気軽に食べ歩きができる。しゅうまい弁当850円もあるが、こちらは予約制とのこと。

しゅうまい

上州富岡~下仁田

駅に戻る。陽が落ちてすっかり暗くなってしまった。

夕暮れの富岡市内
駅に戻る
駅舎内

せっかくなので、終点の下仁田まで行くことにする。次の発車は17:48、到着までしばらく待つ。

ホーム

500形電車が到着。当駅で半分以上の乗客が下車していった。

500形

列車は闇の中をひた走る。終点に近づくと片手で数えられる程度の数の乗客になってしまった。

下仁田の2つ手前には、珍駅名で知られる”南蛇井(なんじゃい)”駅がある。以前下車したことがあるが、ここも素晴らしい木造駅舎が残っている。

下仁田行車内

18:12、終点下仁田に定時到着。

下仁田駅到着

まさに”昭和”の情景。この雰囲気を味わうだけでもここにくる価値がある。

駅舎
駅舎と駅前タクシー

駅は下仁田町の中心部にある。駅から歩いてすぐの場所には、名物下仁田こんにゃくの料理が味わえる旅館「常盤館」がある。富岡から一足伸ばしてここで食事をするのも良い。

常盤館
メニュー

他にも、町内には食事をする場所が多数ある。なぜか洋食屋が多い印象。「下仁田かつ丼」がご当地グルメになっている様子。

上りの高崎行に乗車のため駅に戻る。列車を待つ間、駅の雰囲気を堪能する。

夜の下仁田駅

18:46発の高崎行に乗車。今回の旅を終えた。

500形

感想

世界遺産、城下町、日本庭園、昭和レトロ、木造駅舎、コンニャク料理。このキーワードのいずれかに興味がある人にお勧めの上信電鉄の旅。

今回は時間の都合から半日のショートトリップであったが、できれば1日かけてじっくりと旅を楽しみたいコースだ。

関連リンク

上信電鉄

鉄道コム

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