JR東日本は、4月19日から20日にかけて、田町駅で山手線や京浜東北線の線路切替工事を実施しました。

両線の運休もともなったこの工事は、「羽田空港アクセス線」(仮称)の整備に向けた作業の一環。2031年度の開業を掲げる新線の建設のため、作業員約1000人を動員した作業が、昼夜通して実施されました。
なぜ山手線・京浜東北線を止めた? 田町駅線路切替工事の概要
羽田空港アクセス線は、田町駅付近で東海道線と分岐し、同線の上下線の間に構築されるトンネルを通る計画です。現在は隣接している東海道線上下線の間に、このトンネル用のスペースを設けるため、JR東日本では山手線や京浜東北線も含めた線路移設工事を進めてきました。

工事着手前、田町駅の北側には、山手線用の引き上げ線が存在しました。JRは第1段階として、2024年1月にこの線路を撤去。そして今回、第2段階として、山手線外回りと京浜東北線南行の各線路を西側に移設する工事が実施されました。

切替工事前の準備としては、山手線と京浜東北線の渡り線を一時的に撤去したほか、引き上げ線を撤去したスペースに、新しい山手線の線路の一部を先行して敷設していました。
そして、今回の工事で列車の運転が止まっている間、山手線では、浜松町方(約150メートル区間)および田町方(約80メートル区間)の既存線路を西側に移動させ、先行敷設していた線路と接続しています。
従来の山手線の線路は、若干西側に移動したうえで、京浜東北線南行の線路として転用されました。こちらの移動量は、浜松町方が約290メートル、田町方が約200メートル。加えて、約90メートルの区間では、渡り線の分岐器を含む新しい線路が敷設されています。なお、これまで使われていた京浜東北線南行の線路は、事後撤去するとのことです。



加えて、田町駅の京浜東北線南行・山手線外回りホームも、線路移設に対応するため、形状が変更されました。京浜東北線側ではホームが約0.6メートル削られた一方、山手線側では約1.3メートル拡大され、工事前よりも駅先端のホーム幅が若干広くなっています。
今回の工事の裏では、山手線内回りはダイヤを変更しながらも運転が継続されており、東海道線(上野東京ライン)も区間運休はなく運転されていました。そのため、線路切替工事は、営業列車が走る線路に挟まれながらの実施に。加えて、工事区間も総延長約500メートルと長めのため、限られた時間の中で安全に配慮しつつ工事を進めることに注力したと、JR東日本の工事担当者は説明していました。

なお、線路切替工事による運休は、19日(早朝を除く)は京浜東北線東十条~品川間、山手線外回り上野~大崎間のみで、山手線の内回りは運転が継続されていました。一方、20日は内回りも上野~大崎間で運休しています。JR東日本の担当者によると、19日は線路の物理的な切替のみのため、内回りは運転できたといいますが、20日は信号関連の工事を実施するため、内回りも運転を取りやめる必要があったといいます。
今回の工事は、19日0時ごろから20日11時ごろまで、約35時間におよびました。しかし、大規模な工事はこれで終わりではなく、田町駅付近では今後も線路切替工事が予定されています。
今回の工事では、山手線・京浜東北線と東海道線の間に線路1本分のスペースが生まれました。数年後には、ここへ東海道線上り線の線路を移設する工事を実施するとのこと。これによって捻出されたスペースに、さらに羽田空港アクセス線のトンネルが建設される計画です。
JR東日本の担当者によると、今後の施工計画については現段階で検討中とのことですが、少なくとも東海道線上り線の線路切替工事では、今回のように列車の運転を休止する必要があります。

羽田空港アクセス線とは?
今回の工事が実施された理由である羽田空港アクセス線は、羽田空港と都心方面を結ぶ構想の路線です。現在は京浜急行電鉄と東京モノレールが乗り入れている羽田空港ですが、ここへ新たにJRも乗り入れることで、羽田空港と首都圏各方面を結ぶ新たなルートを構築する狙いです。

羽田空港アクセス線は、東京駅方面に向かう「東山手ルート」、新宿駅方面に向かう「西山手ルート」、りんかい線・京葉線方面に向かう「臨海部ルート」の3ルートが構想されています。いずれも、東京貨物ターミナル駅付近から羽田空港までの間に新設するトンネルと、既存の線路を活用して、各方面と結ぶ計画。現在はこのうち、東山手ルートと臨海部ルートの整備が計画されています。

東山手ルートは、東海道線の線路と田町駅付近で分岐。休止中となっている東海道本線の貨物支線、通称「大汐線」を通り、東京貨物ターミナル駅付近に至ります。今回の田町駅における線路切替工事は、この東山手ルート建設のための準備として実施されました。
西山手ルートと臨海部ルートは、東京貨物ターミナル駅付近からりんかい線に乗り入れるもの。西山手ルートは大崎駅方面へ、臨海部ルートは東京テレポート・新木場方面へ向かうルートとなっています。
羽田空港アクセス線は、2031年度の開業を予定。これが開業すれば、東山手ルートの場合、東京~羽田空港は約18分で結ばれることとなり、従来よりも12分ほどの所要時間短縮が実現する見込みです。