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鉄道友の会選定  2023年ブルーリボン賞・ローレル賞決定 [2023.5.25]

鉄道友の会(会長 佐伯 洋、会員約3,000名)は、東海旅客鉄道株式会社HC85系をブルーリボン賞(最優秀車両)に、また、京都市交通局20系をローレル賞(優秀車両)に選定しました。

なお、ブルーリボン賞は第66回、ローレル賞は第63回となります。

ブルーリボン賞:東海旅客鉄道株式会社 HC85系

東海旅客鉄道 HC85系
写真:鉄道友の会

東海旅客鉄道 HC85系は、高山本線「ひだ」および紀勢本線「南紀」で使われてきたキハ85系の置き換え用として開発された非電化線区特急用車両です。
発電装置+蓄電池のハイブリッドシステム車両として国内最高速の120km/hを実現しています。ハイブリッド車両ながら各機器を小型化・一体化して床下に配置し、屋上は空調機器など最小限の機器のみとしています。エンジンは1両あたり1台としてキハ85系の半数になり、燃費の向上、環境負荷の軽減、車両内外の騒音の低減に寄与しています。また、エンジンは中間に吊枠を挟んだ二段の防振ゴムで取り付けられ、振動・騒音を大幅に抑えて客室環境を改善しています。
車体はフラットな表面を持つステンレス製で、先頭車両は貫通形のみとして編成の自由度を高めています。先頭形状は「和」をイメージした柔らかな曲線で構成されていて、貫通形であることを感じさせず、流れるように配された白とオレンジのラインが躍動感を与えています。
客室はグリーン車では緑と紫のグラデーション、普通車ではオレンジのグラデーションで表現した座席を配しています。また、デッキは木目調の落ち着いた配色とし、「ナノミュージアム」と名付けられた沿線の伝統工芸品などの展示スペースを設けています。また、車いすスペースや多機能トイレなどバリアフリー、ユニバーサルデザインの充実を図っています。グリーン車、普通車ともに全席にコンセントが備わり、車内Wi-Fiサービス、大型荷物対応荷物スペースと現代の旅を支える装備も充実しています。
台車は、溶接量を減少させて信頼度、メンテナンス性を向上した台車枠を採用しています。軸箱支持方式はタンデム式とし、上下・左右・前後のばねを最適に設定できます。非常通話装置のほか、客室やデッキには車内防犯カメラが設置され、乗務員だけでなく、指令所からも通信システムを介してリアルタイムに確認できるため、異常発生時など迅速な対応が可能となり、安全性を向上させています。この通信システムは、エンジンなど主要機器の状態を常時監視でき、不具合予兆の早期把握とともに車両メンテナンスに貢献するほか、列車内表示器を通じて、ダイヤの乱れなどタイムリーな情報を乗客に伝達できます。
会員による投票で最多の支持を獲得し、選考委員会も多くの観点からブルーリボン賞にふさわしい最も優秀な車両であると評価しました。

ローレル賞:京都市交通局 20系

京都市交通局 20系
写真:鉄道友の会

京都市交通局20系は、1981年の地下鉄烏丸線開業時に導入された10系1・2次車の置き換えを目的に開発された車両です。
初編成は2022年3月26日から運行を開始しました。バリアフリー化と多言語案内表示等のインバウンド対応を行うとともに、外観・内装デザインに京都の伝統産業素材・技法を華麗に活用しています。
設計に際しては、2017~2018年度に、工業デザインの専門家や公募の市民を委員とする「烏丸線車両の新造にかかるデザイン懇談会」を設置し、幅広い議論に基づき、「みんなにやさしい地下鉄に」、「京都ならではの地下鉄に」、「愛着がわく地下鉄に」の3つの明確なコンセプトを策定しました。次に具体的な外観、内装デザインを各3案制作し、市民と利用者の投票により最終案を決定しています。
内装は「華やかで雅なカラー」でまとめています。両先頭車の運転室側2扉間に多目的スペース「おもいやりエリア」を設置し、車椅子、ベビーカー、大型スーツケースに対応しています。「おもいやりエリア」の立ち掛けシートの背面部は京都の伝統産業品の飾り付けスペースとし、西陣織、清水焼、京扇子等、今後登場する編成を含め編成・車両毎に異なる18種の「京都ならでは」を展示していきます。両先頭車内では車号と事業者標記に京象嵌を用いるとともに、中間車では通路部上部には釘隠し、吊手のさやに北山丸太と京くみひもを活用しています。車外でも交通局章に金属工芸の鎚起を用いています。 これらは、伝統産業をより一層身近に感じてもらう機会を増やし、業界全体の振興に繋げたいという伝統産業関係者と事業者の思いが一致して実現しました。
外観は「前面の造形に曲面を多用した、より近未来的なイメージ」となりました。構体はアルミニウム合金のダブルスキン構造で、90%以上をモノアロイとしてリサイクルに配慮しています。車体床面を10系1・2次車と比べ60mm下げる等によりホームとの段差を低減するとともに、扉には認識しやすいようにラインカラーのエメラルドグリーンを配置しています。
制御はハイブリッドSiCを用いた速度センサレスVVVF装置で、全閉式電動機を用い、将来のATO運転にも対応するなど、地球環境に配慮した最新水準の車両技術を用いています。
このように、公営交通事業者の通勤車の制約の中で、市民参加によるデザイン策定、多目的スペースの設置、バリアフリー、多言語案内表示等のインバウンド対応、車両内外デザインでの伝統産業品との協創など、完成度が高く最新技術と京都らしさを併せ持つ優れた車両であることを評価し、ローレル賞に選定しました。

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