サヨナラ、キハ28 見届ける整備士の「ありがとう」 いすみ鉄道
「なんとか最後まで無事に走ってほしい」
いすみ鉄道(千葉県)を走る、現役最後の国鉄急行型気動車「キハ28形2346号」。今月27日を最後に、定期運行を終える。
「キハ28形はじゃじゃ馬でへそ曲がり。なだめるように接してきたので、愛着がある……」
長年、整備してきた同社の運輸課長、影山忍さん(49)は、車両を見つめながらそう話した。
キハ28形2346号は、2012年、鳥塚亮(あきら)前社長が観光鉄道化のためにJR西日本から無償で譲渡を受けた車両。
もくろみ通り、車両は大人気で行楽シーズンの沿線は多くの鉄道ファンや観光客らでにぎわった。
戸惑う整備士たち
だが、1964年製の車両に、整備士たちはてこずった。誰も、これほど古い車両を扱った経験がなかったため、JR西日本や鉄道車両整備会社の指導を受けながら手探りで整備。トラブルも多かった。
ドアの開閉ができない。冷房用のエンジンが動かない。新しい車両なら1回でかかる走行エンジンはかからない。
冬場は特に厳しかった。
シリンダー内に直接燃料を噴射する今の方式とは違い、キハ28形のDMH17Hエンジンは予燃焼室式という方式。
燃料を爆発させる主燃焼室(シリンダー)には予燃焼室という小さな部屋が接しており、そこであらかじめ圧力を上げると、燃料と空気が混合したものが主燃焼室に噴き出す。そして本格的な爆発が起こり、ピストンを押し下げ、その上下運動によりエンジンを回転させる。
エンジンを始動させるには、まずバッテリーの電気で予熱栓を加熱して予燃焼室の空気を暖めるが、寒い日の冷え切った大きいエンジンはなかなか動いてはくれない。
毎年しなければならないエンジンのヘッドガスケット交換も大変だった。
ヘッドガスケットは、シリンダーブロックとシリンダーヘッドの間を密閉するためのパッキンで、シリンダー内の爆発圧を外に逃がさないように、冷却水やエンジンオイルが漏れないようにするには強固なシール性が求められる。
他の車両は4年に1回の大規模な検査に併せ外注しているが、毎年あるキハ28形の交換は経費削減のため自社で行ってきた。
交換するには燃料パイプや吸気、排気管などを全て外し、エンジンのヘッドカバーやシリンダーヘッドを取ってから、ヘッドガスケットを交換。逆の手順で元に戻してエンジンをかけるのだが、エンジンの回転にムラがある時などは、再度ヘッドカバーを開けてバルブ調整などをしなければならない。
ヘッドカバーを止めるボルトの締め具合にもコツがいる。
締めすぎるとボルトが折れてしまい、緩すぎるとエンジンオイル漏れの原因になる。しかもボルトの交換部品はわずかしか残っておらず、失敗が許されない。
これらの作業は人手が少ないうえに、技術的に難しく手間がかかるので、主に影山さんが3、4日かけて作業してきた。
最も大きなトラブルは昨年11月6日。
晴れた日の昼下がり、武家屋…
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