今月で定期運行引退の「キハ28」に絶えぬ乗客 CFで車両保存へ

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田中久稔
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 全国で唯一、第三セクターいすみ鉄道千葉県大多喜町)で現役を続けるディーゼルカー(気動車)が、27日で定期運行から退く。還暦近くの大ベテランは老朽化が進み、維持が困難になっていた。歴史的な車両が走る姿を記憶に焼き付けようと、訪れる人がやまない。(田中久稔)

 その1両は1964年製「キハ28 2346」。キハ58系と呼ばれるシリーズ全体で1823両が生産され、かつて国鉄の急行用車両の主力として寒冷地の北海道を除く全国を走った。国鉄民営化後のJRで次々と引退。58系で残るのは、2012年にJR西日本からいすみ鉄道に譲渡されたキハ28だけになっていた。

 観光列車として土日祝日に一往復のみ走る。まもなく引退のしらせに触れ、今月中旬の日曜日、記者は向かった。

 いすみ鉄道は、太平洋沿岸の大原駅(千葉県いすみ市)と山あいの上総中野駅(同県大多喜町)を結ぶ。列車目当てならば、旅程も鉄道づくしで行くのが乙ではなかろうか。上総中野駅でいすみ鉄道と接続する小湊鉄道に、五井駅(同県市原市)から乗ることにした。両鉄道を割安で乗り通せる「房総横断記念乗車券」を購入した。

 日曜の午前8時台というのに、小湊鉄道の2両編成列車の座席はほぼ埋まっていた。山が色づく季節のこと、名所の養老渓谷へ向かう行楽客かと思いきや、途中下車の客は少ない。どうやらいすみ鉄道をめざしているようだ。

 列車は養老渓谷駅を過ぎ、上総中野駅手前のトンネルにさしかかった。ここでちょっとしたハプニングがあった。

 勾配を上る速度がじわじわ落ち、ついに止まってしまった。レールの上に落ち葉がありますと、車掌のアナウンスが流れた。落ち葉の成分で車輪が空転することがあるのだ。ディーゼルエンジンがうなりを上げ、車体を小刻みに震わせる。はうようなスピードでやっと、前へ進みだした。しばしの立ち往生に鼓動が早まったが、これもローカル線のだいご味とばかりに、動画を撮る乗客もいた。

 定刻の約20分遅れで上総中野駅に到着。向かいのいすみ鉄道ホームにいた列車に乗り継ぐ人がいる一方、1時間余り後にやってくるキハ28を待って40人余りが列をなした。途中駅から急行として運行されるため、係員から300円の急行券を買う。硬券と呼ばれる厚手の切符が昭和の旅情をかき立てる。

 キハ28は、キハ52という…

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