タイヤ痕、えぐれたのり面… 観光バス横転、記者が現場で見た痕跡

松田果穂 魚住あかり
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 静岡県小山町須走の県道「ふじあざみライン」で観光バスが横転し1人が死亡、多数の負傷者が出た事故で、県警は14日、運行会社「美山観光バス」(埼玉県飯能市)の本社などを家宅捜索した。記者が事故現場を訪れると、バスが制御困難になった痕跡が残っていた。

 断続的に続く生々しいタイヤ痕、大きくえぐれたのり面――。事故から一夜明けた14日朝、現場となったカーブには、道路の状況を調べる県警の捜査員らの姿があった。

 小山町須走から富士山須走口5合目をつなぐ県道「ふじあざみライン」は14日昼過ぎまで車の通行が規制されていたため、記者は約1時間半かけて現場へ上がった。

 周囲に木々が生い茂るなか、勾配のきつい片側1車線の一本道の上り坂が続く。スマートフォンの地図で確認すると、道の駅から約6キロ、高さ540メートルほど登っていた。

 現場では捜査員らが道路の形状を調べるため、立体的な写真が撮れる「ステレオカメラ」と呼ばれる機材を使い、現場付近のカーブや坂道を撮影していた。道路の傾斜や道幅、カーブの半径などを計測できるという。ただ、現場付近は標高が高く、天気が変わりやすい。昼前に冷たい小雨が降り出すと作業は中断され、別の器具を使ってタイヤ痕に沿って白線を引くなどして現場を調べていた。

 5合目から降りるバスがカーブにさしかかる直前は長い直線の下り坂だ。スリップかブレーキでついたのだろうか、路面には断続的にタイヤ痕が残る。下り坂が終わる直前で一度反対車線にはみ出した後、走行車線に戻り、そのままカーブ途中ののり面に向かって伸びていた。のり面の土は大きくえぐられ、事故の激しさを物語っていた。

 県によると、ふじあざみラインの路肩には、下りでブレーキが故障して止まれなくなった車が進入できる「緊急退避所」は設けられていない。道路管理者の判断で必要に応じて設けることになっているといい、担当者は「これまで今回のような事故はなく、必要と判断されてこなかったのではないか」と話している。(松田果穂)

      ◇

 「怖いイメージがついてしまった。直近のバスツアーはだめになるだろう」。富士山須走口5合目で山小屋「東富士山荘」を営む男性(71)はこぼした。

 毎年この時期は、紅葉を楽しむ登山客が食事に訪れるかき入れどき。14日は8組ほど予約が入っていたが、事故が報道されるとすべてキャンセルとなった。

 山小屋へ通じる道路の通行止めは14日昼過ぎには解除された。ただ、男性は「横転事故の影響は大きい。客足が戻る見込みは薄いのでは」とつぶやく。

 男性は事故があった13日には、横転したバスに乗っていた乗客たちが楽しそうに周囲を散策しているのを見かけた。「亡くなられた方が本当にかわいそう。山道は慣れた運転手でないと難しい」と話した。(魚住あかり)

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