「新幹線で貨物輸送を」 眉ひそめられた持論に時代が追いついた?

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編集委員・大鹿靖明
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 今年は国鉄分割民営化から35年の年である。JR発足後、新幹線の距離は1・5倍近くなったが、列島の大動脈を人口減とコロナ禍が襲う。そんなピンチをはね返すアイデアがある。新幹線を貨物輸送に使おうというのである。(編集委員・大鹿靖明)

「仙台から北、岡山から西、ガラガラ」

 新幹線で貨物を運ぼう。JR九州元社長の石井幸孝さん(89)は十数年間、そんな持論を唱えている。JR各社には「とっぴな意見」と眉をひそめる人もいたらしいが、国土交通省の設けた検討会が7月、新幹線による貨物輸送を検討することを打ち出した。時代が追いついてきたのである。

 「新幹線は仙台から北、岡山から西がガラガラです。東海道新幹線は1時間あたり14~15本走っても九州新幹線は3~4本程度、北海道新幹線に至っては1本以下。整備新幹線のハードウェアに見合うお客さんがいない。過剰設備になっているんです」

 石井さんはJR九州で「九州に新幹線を」とずっと主張してきたのに、いざ2011年に博多―鹿児島中央間が開通すると、特に博多―熊本間などの特急利用客が、増発した高速バスにさらわれた。「会社が払ってくれるサラリーマンの出張は別ですが、個人客は安い方に流れてしまう。それで、旅客が乗らないなら物流をやろう、と」。人口減から50年にはすべての鉄道会社が経営難に陥ると予想していたが、それがコロナ禍による移動の減少や在宅勤務の加速で早まりそうだ。

 新幹線で貨物を運べば、在来…

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