第6回「三陸鉄道を支えたい」東京から入社、23歳運転士が見た「奇跡」

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吉田耕一郎
【動画】日本最長の三セク「三陸鉄道」 絶景に描く若者の未来=吉田耕一郎撮影
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 午前5時半すぎ。鳥のさえずりが聞こえる中、三陸鉄道の宮古発釜石行きの一番列車が走り抜けていった。巨大な防潮堤の奥に広がる山田湾は、朝焼けの光に包まれていた。

 岩手県の三陸鉄道リアス線は、第三セクターとしては日本最長の163キロを走る。東日本大震災後の2019年、JR山田線の宮古―釜石間が移管され、盛(さかり)から久慈までがつながった。 津波や台風など大災害に加え、コロナ禍での観光客の減少もあって経営的には苦しい状況だが、近年、明るい兆しもある。10代、20代の若手社員が全従業員の約3割になり、「三陸鉄道を支えたい」と入社してきた県外出身者も6人いる。

 東京都板橋区出身の成瀬賢紘(たかひろ)さん(23)もその一人だ。

 昨年4月に入社。社内試験に合格し、9月16日付けで念願の運転士デビューを果たした。

 母方の祖父母が久慈市在住で、幼いころから、お盆の帰省などで三陸鉄道に乗っていた。

 小学6年だった2011年の東日本大震災で、三陸鉄道が壊滅的な被害を受けた時は、「言葉にならないほどのショックを受けた」。近所の友達数人と千羽鶴を折り、震災の年の夏休みに久慈駅を訪れた。中学1年生として、自分たちができる精いっぱいの応援だった。突然の訪問にもかかわらず、駅長、運行本部長らが出てきて受け取ってくれたことが心に残った。

■「三鉄漬け」の毎日、同僚た…

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