開かないドア、濁水に浮く母「死ぬ――」  記録的豪雨から一夜明け

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小田健司 柳川迅 堀川敬部
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 猛烈な雨から一夜明けた6日、福井県では被害の全容が明らかになってきた。県によると、人的被害はなかったが、記録的豪雨に襲われた南越前町を中心に350棟超が浸水。同町のJR北陸線も水や土砂にのみこまれた。復旧作業のため、JR西日本は特急や在来線を少なくとも9日まで運休する予定だ。

 6日午前、氾濫(はんらん)した鹿蒜(かひる)川近くの南越前町今庄地区では、おおむね水がひいた家々で住民が片付けに追われていた。

 「あんな恐怖は初めてだった。母を死なせるところでした」。井口利行さん(73)は振り返った。

 5日早朝、ひどい雨と雷に目を覚まし、午前6時には妻と周辺を見て回った。だが、みるみる足元の水位が上がっていった。自宅には離れで母(95)が1人。要介護には至らないが「要支援2」だ。

 「これはまずい」。すぐに戻ったが、水圧で自宅のドアが開かない。裏手の出窓から家に入り、離れにたどりついた。ところが、その間も水位は上がり、母を助けて出るときには部屋のドアも開かなくなった。

 外から妻にもノブを引っ張ってもらい、力任せにドアを押した。濁水は胸元に迫り、母は「死ぬー。死ぬー」と叫びながら、濁水に浮いていた。

 何とか開いたドアから抜け出した。母は背負えず、母屋の2階へ上がる階段を尻をつかせながら1段ずつ押し上げた。2階から消防隊のゴムボートで救助され、母は介護施設に入所させてもらった。

 井口さんは話した。「自分のことはなんとかなると思ったが、母親が心配だった。助けることができて本当に良かった」

 近くに住む稲吉沙織さん(3…

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