「誤解招く」JRのパンフに批判 リニア新幹線、水資源問題めぐり

床並浩一
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 リニア中央新幹線の静岡工区で懸念されている水資源問題をめぐり、JR東海が配布しているパンフレットに、関係者から批判の声が上がっている。説明が不十分な掲載内容に加え、県の専門部会の直前に配布が始まった経緯も問題視されている。JR側は回収しない方針。

 このパンフは、トンネル工事に伴う大井川の流量減少を懸念する流域住民らを対象に意見募集を始めるのにあわせて作成されたもの。国の有識者会議が中間報告で「双方向のコミュニケーション」を求めたことから用意した。全面カラー刷りで20ページあまり。意見募集の案内小冊子とともに、流域10駅や静岡駅の構内で配布されている。

 トンネル工事をめぐる技術的課題が論点ごとに整理され、理解を助けるためにイラストやグラフが多用されている。県外流出量と同等の取水量を減らすダム取水抑制案も実現可能性が不安視されているが、「実施が可能な案だ」と紹介されている。県によると、流域市町や利水者から「国有識者会議や県専門部会の指摘事項が明記されていない」「一部の内容だけで安心安全の判断をされてしまう」といった反応が寄せられているという。

 JRは資料を県側に事前説明した際、一部表現について「丁寧な説明が必要では」との見解を伝えられたが、応じなかったという。

 県は「この資料を基にした意見募集では誤解を招く懸念がある。双方向のコミュニケーションに沿うものではない」と批判する。

 パンフの配布から1週間後の20日に開かれた県専門部会で、難波喬司理事は広く意見を募る取り組みに一定の理解を示しながら「印象操作になる可能性もある。部会を踏まえてから配布してもいいのに、JRの対応は理解に苦しむ」と苦言を呈した。

 JRは「中間報告を踏まえ、我々にできることを考えた。作成準備が整ったので、この時期に出すことになった」と理解を求める。(床並浩一)

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