来年度で運行終了の「おろち号」 今年の運行を開始 JR木次線

杉山匡史
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 【島根】JR木次線の存続が注目される中、老朽化などで2023年度で運行を終了する観光列車「奥出雲おろち号」(3両編成、定員64人)の今年の運行が10日、始まった。出雲市駅で出発式の後、鉄道ファンらで満席となった第1便が定刻通り発車した。

 1998年4月の運行開始から今年で25年目の「おろち号」は、ディーゼル機関車と窓を取り払った開放的なトロッコ車、雨天時などに客が乗る控車(ひかえしゃ)で編成。閑散期で保守点検をする6月を除いた4~11月の週末を中心に、木次(雲南市)―備後落合(広島県庄原市)の60・8キロを各駅停車で1日1往復(一部は出雲市駅まで)運行する。

 急勾配の山を列車が前後進を繰り返して進むJR西日本唯一の「3段式スイッチバック」区間が見どころだ。

 19年は約1万3千人が利用。20年はコロナ禍で運行の一時取りやめなどの影響で約6千人に落ち込んだが、21年は運行終了の発表もあって約1万1千人と持ち直した。24年間で延べ約30万人が利用した。今年の運行は昨年と同程度の130日の予定。すでに5月8日までの土日の備後落合行きはほぼ満席という。

 初日の出発式で丸山達也知事は「引退によって雄姿と車窓からの風景が見られる期間は限られるが、多くの人に乗ってもらえるよう努める」とあいさつ。鉄道ファンで埼玉県越谷市から父親と泊まりがけで来た大学生(22)は「前から乗りたかった。なくなるのは寂しいが車窓からの景色を楽しみたい」と話し、発車までの間、車体などの写真を熱心に撮っていた。

 おろち号の終了は、運行開始時から使っている車両が70~78年の製造で老朽化が進み、車検が切れる23年を「節目」として決めた。

 一方で島根、広島両県の沿線自治体は運行継続を求めてJR西と協議。その結果、JR西は今年1月、沿線地域の観光振興の観点から、おろち号の代替で山陰線の鳥取―出雲市駅間を走る観光列車「あめつち」の乗り入れと現行の定期列車の装飾案を提案した。自治体とJRなどで作った専門チームが具体化に向けて協議を始めている。

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