「和」のイメージ大切に JR四国の観光列車デザイン担当社員の思い

福家司
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 【愛媛】JR四国観光列車である、新しい「伊予灘ものがたり」が4月2日から走り始める。同社の観光列車のデザインは、社員の松岡哲也さん(53)が担当している。高名なデザイナーに頼る鉄道会社が多い中、四国に根ざした発想で独自色のある車両を次々と生み出す秘密は何か。松岡さんに、思いを聞いた。

 ――新しい伊予灘ものがたりは、初代と似ている部分もありますね。

 最初の車両を作ったときは、まさかこんなに多くの人に支えられる人気の列車になるとは思いませんでした。だから、デザインのイメージやコンセプトはできるだけ変えたくなかった。といいつつ、3両目の個室などの新しい取り組みで、少しは成長した車両も作れたかな、と思っています。

 ――特に工夫した点はどこですか。

 たとえばみかんをイメージした照明。社内には四国4県出身者が多いので、肌感覚というか、地元ならではの発想をするのが大事ですね。

 また、これまでの観光列車は壁を作らず、和室の開放的なイメージで作っていたので、沿線で手を振っていただくなどのおもてなしにもつながった。伊予灘ものがたりは海側を見せる車両といいながら、山側も大洲城で旗振りをしてくださっているので、壁を作る個室は難しいと思っていました。なので、個室は運転台の後ろに作って、海も山も見えるようにしました。

 ――「ここにしかない列車を作りたい」とよくおっしゃっていますが。

 新幹線はかっこよくて、子どもにもあこがれの的のデザインです。でも、四国は人口も少ないし、新幹線とは求められるスピードやニーズも違う。私は別のアプローチをしたほうがよいと思います。少し遊びの要素が入ったデザインがいいのではないでしょうか。

 「四国まんなか千年ものがたり」は奥祖谷の古民家、「伊予灘ものがたり」も道後温泉のモダンな和建築がイメージにあります。(大学で)建築の勉強をする中で学んだ和の建築が、私のデザインの根底にあるのかなと思います。今の「かわいい」「やさしい」文化も和から来ていると思うので、観光列車に採り入れたかった。

 ――グループ会社や工場にいつも感謝しておられますね。

 細かい部分の作業は、最初の車両はメーカー任せでしたが、今はグループ会社や工場の作業が増え、みんなでがんばって作っているのが進化した部分かもしれない。色へのダメ出しなど、工場や車両課などいろんな人たちのアドバイスも結構いただいて、車両のグレードも上がっています。

 伊予灘ものがたりでは、コンセントを各席のテーブル下に付けようとしたのですが、既存の車両の改造なので、壁に埋め込むすき間がなかった。いろんな観光列車をみてきた工場のスタッフが、それならUSBタイプにしては、と提案してくれました。

 ――現在は会長の半井真司さんから車両のデザインを命じられたんですね。

 最初は駅のデザインなどを担当していたのですが、デザインを車両に生かせる職場を与えていただけたのは、ありがたいと思っています。

 ただ、列車は駅とは全く注目度が違います。最初は自分でいいのかな、と思いました。建築をやっているときよりプレッシャーはありますが、やりがいのある仕事を与えていただいているので、がんばらないと。

 ――管理職となった今、後継者は育っていますか。

 自社で観光列車のデザインをやれるんですね、という動機で入ってくる若い人もいるので、何とか活躍の場を与えていきたいとは思っています。デザインの仕事に興味を持っている人が入ってきてくれているのはうれしいですね。(福家司)

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