「鉄道は記憶呼び起こす」JR四国と連携、いすみ鉄道の古竹社長

福家司
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 【香川】千葉県にある第三セクターいすみ鉄道が昨秋から実施してきた四国の急行でかつて使われたヘッドマークを付けた列車運行が27日で終了する。遠く離れたJR四国と連携したことは何をもたらしたのか。

 ヘッドマークは四国でかつて走った急行「うわじま」「いよ」の2種類が切り替え表示できるカラーの1枚で、JR四国が貸し出した。このほか、JR四国社員の知人が所有するというカラー化前の「土佐」「いよ」の白地のヘッドマークも貸し出された。

 運行は四国で実施された観光キャンペーンに合わせて昨年10月に始まった。土日祝日が中心で、四国にもかつて走っていたものと同型の国鉄急行形ディーゼル車、キハ28などに掲げられた。

 しかし、老朽化しているキハ28の故障で、11~12月には運休を余儀なくされた。そこで、JRはヘッドマークの貸与期間を3カ月延長し、キハ28は今年1月、昭和40年代の四国の急行に塗られていたという「赤ひげ」を付けて再登場した。

 今回の連携をJRに提案した古竹孝一社長(50)=高松市出身=は「四国のヘッドマークを見て感動する人が多いのに驚いた。鉄道には、それまでの人生をフラッシュバックさせる役割があるんだ、と感じました」と話す。記念乗車券が完売するなど、関連グッズの売れ行きも好調という。

 さらに、四国と千葉の縁も強く感じたという。かつて千葉の路線に海水浴客が集中する夏の一時期、四国など全国から応援のディーゼル車が駆けつけており、四国からきた車両には「赤ひげ」が付いていたという。

 JR東海の初代社長で鉄道友の会会長の須田寛さんは今回の連携の一環で昨年11月にいすみ鉄道を訪問して座談会に参加した際、それぞれ起点となる高松、千葉から3線に分かれていた路線の形状などの共通点に言及した。古竹さんは「四国は島国、千葉は半島で、気質の面でも似ているのかもしれない」。

 古竹さんには今、悩みがある。老朽化したキハ28が12月、8年に1度の全般検査を迎えるのだ。「コロナ後の乗客数はコロナ禍前の35~40%減、収入も約40%減になっている。古い車両を維持するのは小規模な鉄道事業者には大きな負担だ」。全検を通す場合、エンジンを積み替えることも検討しているが、「ファンの『あのエンジン音がいいんです』という声を聞くと、どうしようかと思います」という。

 ヘッドマークの連携はひとまず終わるが、古竹さんは今後も連携を続けたいと考えている。「疲弊した地方を盛り上げるのには、鉄道会社ががんばらなければ」。一方で、「関東でJR四国をPRできる場も少ない。こういう形でのPRもありでは」とも話し、古里の鉄路を思う。(福家司)

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