三島市、子育て世代狙い「公共交通マップ」 利用者減り試行錯誤

南島信也
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 【静岡】鉄道やバス、タクシーといった地域の足として必要不可欠な公共交通機関の維持や確保に、どの自治体も頭を悩ませている。人口減に加え、新型コロナウイルスの影響で利用者の落ち込みに拍車がかかる。利用拡大の一助になればと、周辺の名所を散策する際に便利な「公共交通マップ」を三島市がつくった。子育て世代にターゲットを絞り工夫を凝らしたもので、学校などで配布を始めた。

 マップは、市内在住の絵本作家えがしらみちこさん(43)が、親しみやすさと手に取りやすさを意識してデザインした。親子で観光地を散策する様子のイラストが描かれ、優しい色使いで可愛いデザインのマップだ。手のひらサイズに折りたためるコンパクトな大きさで、広げるとA3サイズになる。

 三嶋大社、楽寿園、三島スカイウォークといった市内の名所のほか、柿田川公園、クレマチスの丘、沼津港など市外の観光地への路線バス、タクシーの運賃、所要時間といったお役立ち情報も盛り込まれている。三島市は1万部つくり、市内の保育・幼稚園や小学校、三島駅南口の観光案内所、市役所などで配布している。

 いま全国の自治体で少子化による人口減やコロナの影響で、公共交通機関の利用者が激減し、公共交通網の維持が困難になりつつある。三島市も例外ではない。中心市街地から離れた丘陵地に開発されたニュータウンでは造成から40~50年経ち、住民の高齢化が進んでいる。運転免許証を返納した高齢者が日常生活を送るために必要な交通手段の確保・維持も大きな課題だ。

 そこで、国や交通事業者、住民、学識経験者らと検討を重ね、「三島市地域公共交通計画」を策定した。2018~22年度までの5年間の計画で、「持続可能な公共交通網の構築」をめざし、「将来の公共交通ネットワークの再構築」を見据えた内容だ。

 三島市の人口密度は県内トップクラスで、コンパクトな街づくりに適している。また、公共交通の人口カバー率が90・5%(15年調査)と、地方都市としては非常に高い。ただ、民間事業者が路線を維持できない地域が広がりつつあるという現実もある。

 一定の距離に駅やバス停などがない「公共交通空白地域」のため、市は現在3路線で走らせている自主運行バスを4月から6路線に増やす。さらに、タクシーの利便性とバスの低価格という特徴をミックスさせたデマンド型乗り合いタクシーを今年夏ごろに導入するなど、「空白地域」対策を本格化させている。民間事業者への補助を含め、こうした交通対策事業として22年度予算に約1億円を計上した。

 市の石田雅男都市計画課長は「SDGs(持続可能な開発目標)の目標のひとつである『住み続けられるまちづくりを』を実現するために、公共交通網の維持に知恵を絞っていきたい」と話す。(南島信也)

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