木次線おろち号の代替で「あめつち」 ラッピング列車も併用 JR西

杉山匡史
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 【島根】2023年度での運行終了が予定されるJR木次線の観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」について、JR西日本米子支社は20日、山陰線を走る観光列車「あめつち」を代替として木次線に乗り入れる案を明らかにした。2月に予定する沿線自治体との検討会で、今後の方向性が決まる見込み。

 松江市であった沿線自治体の担当者会合で示した。

 「あめつち」(2両編成、定員59人)は、普通列車を全面改装した同支社で唯一の観光列車。18年7月から鳥取―出雲市駅間を土~月曜日に1日1往復、不定期で運行している。

 1号車は島根、2号車は鳥取をイメージし、両県の伝統工芸品などを採用。外装は上部が山陰の空や海を表現した紺碧(こんぺき)色、側面下部は山陰の山並みとたたら製鉄にちなんだ日本刀の刃文(はもん)を施す。コロナ禍前の19年度は約1万1千人が利用したという。

 支社によると、24年の改装後に乗り入れる予定で、運行は行楽期を中心に週1回程度。区間は宍道駅(松江市)から出雲横田駅(奥出雲町)まで。出雲横田駅から広島・備後落合駅間には列車が前進、後進を繰り返して進むJR西唯一の「3段式スイッチバック」区間があるが、急勾配のため、車両の性能上運行できないという。

 一方、宍道駅から備後落合駅までの区間には、現行の定期列車の内外装をラッピングするなどした車両を走らせる。いずれも両県の沿線地域の観光振興の観点からの提案といい、運行日数など詳細は今後、調整する。「あめつち」は鳥取―出雲市駅間の運行もあるため、実際の運行には島根、鳥取両県との調整も必要としている。

 「おろち号」を巡ってはJR西が昨年6月、車両の老朽化などを理由に運行終了を発表。以後、島根、広島両県と沿線自治体、米子支社で運行継続と観光振興策を探る検討会が開かれてきた。昨年12月の第4回会合では、島根側の2市町が新たな観光列車の導入を求めて費用支援を表明し、支社は持ち帰って検討するとしていた。

 この日の会合で支社は、新たな車両の導入については木次線の利用低迷など経営の問題や、導入のための技術の習得、運転士の訓練などが必要になるとして、財政支援の有無に関わらず導入しないと説明。広島側からは、広島への乗り入れがないことに驚きと不満の声が上がった。

 会合後、島根県の藤井洋一・地域振興部長は「現段階で最大限の内容と理解する。トロッコ継続を要望していたので満点ではないが、ゼロ回答でもない。2月の会合で考え方を示す」と述べた。(杉山匡史)

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