「10%値上げ必要」京都市営地下鉄・バス、有識者検討委が答申

向井光真
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 乗客が減って赤字に陥っている京都市交通局の経営再建計画について、有識者の検討委員会は6日、市営地下鉄・市バスとも「10%程度の値上げが必要」とした答申書を市交通局に提出した。市交通局は答申を受け、再建計画案を2月議会に提出する。値上げは国の認可が必要で、早くても2024年度になるという。

 新型コロナウイルスの影響もあり、20年度決算で地下鉄は54億円、市バスは48億円の赤字に。地下鉄は、国から再建計画の提出を義務付けられる「経営健全化団体」に転落した。

 経営ビジョン検討委員会は答申書で、現状のまま事業を続けた場合、利用者数が一定程度回復しても赤字が続き、両事業とも経営破綻(はたん)するとの見通しを示した。

 対策として、利用状況に応じたダイヤの見直し▽地下鉄の改札無人化▽事務の見直しによる人件費抑制▽駅ナカビジネスの強化などの対策をさらに検討するべきだと提案。それでも不十分なら「運賃単価を上げるほかに手段はない」として、安定経営の実現には「両事業ともに10%程度の運賃改定を見込む必要がある」と指摘した。

 地下鉄の初乗り運賃は、全国の公営地下鉄で最も高い220円。運賃は区間に応じて最高360円だ。

 市バスの均一運賃区間は比較的高水準の230円。対象区間を高雄や嵐山などにも拡大している。運賃の最大は420円。

 市交通局によると、10%程度値上げすれば、地下鉄は24年度に経営健全化団体を脱却でき、バスは25年度に黒字化する見通しだという。

 市交通局は昨年11~12月、市バスで20円(約9%)、地下鉄で30円(約11%)の運賃値上げを見込んだ計画案について、市民の意見(パブリックコメント)を募集した。市民ら268人から計662件の意見が寄せられ、値上げについては93件の意見があった。なかには「旅客数が元に戻らないのであれば仕方ない」「経営難を乗り越えた際には割引すればよい」などの賛成の意見と、「更なる乗客数の減少を招く愚策」「観光客ばかりあてにして地元住民をないがしろにした結果」などの反対意見もあった。

 検討委の塚口博司委員長(立命館大名誉教授)は「市民らが作り上げてきた京都の公共交通を継続的に守ることが重要。心苦しいが、運賃値上げは最後の手段としてやむを得ない」、市交通局の山本耕治局長は「答申を重く受け止め、経費削減はもちろん、多くのお客様に乗っていただけるようにしていく」と話した。

 門川大作市長は4日の年頭記者会見で「市民の大切な足を持続可能なものにしていかないといけない。必要な値上げについてはご理解をたまわりたい。(値上げ額は)答申を踏まえて検討していく」と述べた。(向井光真)

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