危険な状況だった リニア新幹線トンネル事故原因 JR東海副社長

松下和彦
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 【長野】岐阜、長野両県内のリニア中央新幹線トンネル工事で相次いだ事故について、JR東海の宇野護・副社長は22日、2人が死傷した岐阜県中津川市の現場では「(国の)ガイドラインに定められていることに対処していなかった」と述べ、危険な状況での作業があったとの認識を示した。

 リニアに関連する長野県南16市町村の首長と県、JR東海との意見交換会(冒頭のみ公開)が22日、飯田市内であり、終了後に取材に応じた。

 宇野副社長は、中津川市の瀬戸トンネルと長野県豊丘村の伊那山地トンネルでは「状況が違う」とした上で、「中津川では発破直後の切り羽(掘削の先端部)に不発の火薬があるようだ、と近づいた。何も防護していない、いつ肌落ち(掘削面からの岩石落下)が起きてもおかしくない状況で立ち入るという危険な状況だったと思われる」と述べた。

 豊丘村で11月8日に起きた事故は「ガイドラインに沿って対応していたが、それでも事故が起きた。どこが十分でなかったか、いま突き詰めているところ」とした。二つの事故原因は、再発防止策とともに近く公表し、県や沿線市町村に伝える。その後、工事を再開するという。

 JR東海は事故後、工事を請け負う施工会社などと安全対策について情報共有する協議会を設置。会長を務める宇野副社長は「私が先頭に立ってより強力に進めていきたい」と述べた。

 また、トンネル工事で発生する、ヒ素など自然由来の重金属が基準値以上含まれる汚染対策が必要な「要対策土」について、宇野副社長は、公共工事での活用を検討するよう市町村に要望した。県内の自社用地は保守基地や変電所などに限られ、大量に処分できないとして、道路などへの利用を提案した。

 意見交換会の冒頭のあいさつでは、南信州広域連合長の佐藤健・飯田市長が、事故後に地元自治体への連絡が遅れたことに触れ「プロジェクトへの住民の信頼に関わる」と苦言を呈した。また、7月に静岡県熱海市で起きた土石流災害で、住民が盛り土の安全性に懸念を深めていることなどを挙げ、JR側に「きめ細かな対応」を求めた。(松下和彦)

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