高波に壊された鉄路が映画に 町長の苦悩描く、北海道・日高線

鈴木智之
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 災害で不通となり、復旧されないまま2021年4月に廃線となった116キロの鉄路が北海道にある。太平洋を望む雄大な風景で知られたJR日高線の鵡川(むかわ、むかわ町)―様似(さまに、様似町)間だ。廃線を余儀なくされた沿線町長の苦悩や、地元住民の暮らしを描いた映画がこの秋に完成した。22年1月から京阪神でも公開される。

 日高線は1937年に苫小牧苫小牧市)―様似間146・5キロが全通した。沿線住民のほか、襟裳岬を目指す観光客らの足となったが、やがて人口減少や道路網の整備により、利用は低迷。2015年1月には、高波が襲いかかり、海辺の線路を破壊した。鵡川―様似間の不通が続き、JR北海道と自治体の協議の末、20年10月に廃止が決まった。

 苫小牧市出身の稲塚秀孝監督(71)=東京都調布市=は19年、復旧が進まない状況を知り、カメラを手に取ったという。高額な負担金に悩んだ沿線の町長の言葉や、地域で生きる老若男女の日常を映した。映画の後半では、廃線後の活用を模索し、線路を歩くイベントを企画する住民の姿も収めた。

 稲塚さんは廃線が懸念されるJR西日本の芸備線(広島、岡山両県)など、他の鉄道の行く末にも気をもんでいる。「全国的に廃線ラッシュの中、経済効率だけで鉄路が引きはがされる現状が見直されてほしい。映画が公共交通のあり方を考えるきっかけになれば」と話す。

 映画のタイトルは「日高線と生きる」。10~11月に道内で上映し約1200人が鑑賞したという。京阪神での公開予定は、シネ・ヌーヴォ(大阪市西区)=1月22日~2月4日▽京都シネマ(京都市下京区)=1月28日~2月10日▽元町映画館(神戸市中央区)=2月5日~11日。(鈴木智之)

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