ローカル線が与える影響 看護の視点で住民調査 県立大生

杉山匡史
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 看護師や保健師らを目指す島根県立大学出雲キャンパスの学生たちが今秋、看護の視点からJR木次線などローカル線が沿線住民に与える意識調査を初めて実施した。鉄道の存在や駅舎には、交通手段以外の役割や意味もあることが浮かび上がった。

 調査は9月、看護学科4年生の高橋行哉さん(21)を中心に進めた。雲南市の協力で、住民計190人に調査用紙を配布。有効とした154人の回答をもとに分析した。

 その結果、駅舎が果たす役割(交通手段以外)で多かった回答は「雑談や会話の場」(27%)、「情報を得る場」(25%)の順だった。通院時に鉄道を利用した人に、車窓の風景の感じ方を尋ねると「病院に関する不安が軽減された」が36%で最多。散歩や通勤などで列車を見た受け止め方では、「楽しい気持ち」「幸せな気持ち」があわせて6割近くに達した。

 鉄道は、沿線住民の心理的な安心感や楽観的な感情をもたらすと推測され、「未利用者に利用を促せば鉄道の存続だけでなく、心理的な健康や幸福感にもつながり、高齢者や障害者の行動範囲拡大や症状緩和に影響を与える可能性もある」としている。

 高橋さんは同級生5人らと事前に実施したフィールドワークでの乗車なども通じ、「流れる風景に穏やかな気持ちになり、適度な揺れから心地良さを感じた」「鉄道は生活の一部とわかり、地域資源として生かしたい」などの感想を抱いたという。

 指導した看護栄養学部の阿川啓子准教授(53)は「地域に関心をもつことで住民との輪が広がり、看護職の専門的な視点と組み合わせた列車や駅の利用も提案できる」と期待する。

 「ローカル線の役割」をテーマにした取り組みは来年度も続けるという。(杉山匡史)

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