気分はジェットコースター DMV試乗、記者が見どころ紹介

斉藤智子
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 徳島県南部と高知県東部を結び、線路と道路の両方を走る阿佐海岸鉄道(徳島県海陽町)のDMV(デュアル・モード・ビークル)の報道向け試乗会が14日あった。25日の営業運行開始を前に、記者が乗り心地や見どころを体験した。

 まず、バスモードで「阿波海南文化村」(海陽町)を出発。甲浦駅、海の駅東洋町(ともに高知県東洋町)を経て、道の駅宍喰温泉(海陽町)まで16・1キロ、35分間の道路と線路の旅の始まりだ。マイクロバスを改造した車両は運転席のほか、座席18、立ち席3。広々とした窓が気持ちいい。

 記者は、この日を楽しみにしてきた。「ジェットコースターに乗ってるような気分」。1年前、動作確認のため線路上を初めて鉄道モードで走ったDMVに乗った阿佐鉄の井原豊喜専務の感想を聞き、「いいなあ」とうらやましかった。

 阿波海南駅にはすぐ着き、鉄道モードに「モードチェンジ」。車体の前後に鉄輪が1ペアずつ下りてレールに接地し、前のゴムタイヤが浮かび上がるまで15秒ほど。体が少し浮き上がるような感じがあり、ガクン、としたところで「フィニッシュ」の車内放送。レール上は後ろのゴムタイヤが駆動輪となり、鉄輪と合わせて6輪で走行する。

 阿波海南駅から甲浦駅まで10キロが鉄道区間だ。海岸に迫った山ひだを貫いて約20のトンネルがあり、4・7キロを占める。ディーゼル車では最高時速70キロだったが、最高時速60キロで走る。

 レールの継ぎ目でガタン、ゴトンと振動が伝わってくる。車体が小さいからか、加速の変化も直接伝わる。ずっと高架で、遊園地のアトラクションっぽい。

 阿波海南―海部間(1・5キロ)は1973年に国鉄牟岐線の延長として開業し、DMV導入に伴ってJR牟岐線から阿佐鉄に編入された。海部駅近くの長さ44メートルの「町内(まちうち)トンネル」は知る人ぞ知る名所だ。貫く山がないのにトンネルだけがある。町によると、開業当時あった山が宅地造成で掘削され、1975年ごろの航空写真では山がほぼ残っていないという。

 左手に海の眺望が開ける区間を過ぎると、まもなく宍喰駅。停車中、高架の右手に広がるピンク色の花畑が目に入った。町観光協会が地域住民らやNPO法人などと展開する「宍喰駅フラワーパークプロジェクト」。田んぼ1・6ヘクタールを1年間借り、春に菜の花、夏にヒマワリを咲かせ、今は満開直前のコスモスが一面に揺れる。これだけ手入れするのは大変だ。DMVを歓迎する地元の心意気を感じた。

     ◇

 徳島県南部と高知県東部を結んで線路と道路の両方を走る阿佐海岸鉄道(徳島県海陽町)のDMV(デュアル・モード・ビークル)の車両3両のうち1両が地元向け試乗会初日の9日にエンジントラブルを起こした問題で、徳島県は14日、性能試験の過酷な使用状況が原因だったと発表した。

 県によると、その車両はすべての安全性能試験に使われ、常に満車状態で急発進や急停止を繰り返していた。このため、スロットル(エンジンに空気を送る弁)に、大量のすすが付着して滑らかに動きにくくなるなどの不具合が起きたという。当面は点検の間隔を短くして対応するという。(斉藤智子)

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