未来のバス静かに発進 徳島で運行の中四国初の燃料電池バスに試乗
伊藤稔
水素を燃料として、二酸化炭素を排出しない燃料電池バス(FCバス)の路線運行が1日、中四国で初めて徳島県内で始まった。環境に優しい次世代の乗り物とされるFCバスはどんな特徴があるのか。先月開かれた試乗会に記者も参加した。
運行する徳島バス(徳島市)が使用する車両はトヨタ自動車「SORA」。定員は78人(座席22、立ち席56)。窓は大きく、車いすやベビーカーのスペースもあり乗降も楽にできるという。動き出しはスムーズで、走行中の車内はとても静か。車内での県の担当者による解説も、マイク無しでよく聞こえ、会話も大声を出す必要は無かった。
天井の高圧タンクに充塡(じゅうてん)された水素と空気中の酸素の化学反応により発生した電気で、モーターを回して走る。1回の水素充塡で約200キロ走行可能。高出力で大容量の電力供給能力を備えているため、災害時の電源としても活用できる。
車体価格は1台約1億円で、国と県が2台で計約1億8千万円を補助。水素充塡は東亜合成(東京)が徳島工場隣接地に設置した水素ステーションを使う。
県によると、ステーション設置や高額な車体価格など、FCバスの普及には課題が多い。試乗会に参加した徳島大名誉教授の英崇夫さん(77)は「車内は音も静かで、広々としていた。だがステーションをガソリンスタンド並みに広げないとなかなか普及しないだろう。社会構造を変え、政治主導で進めてほしい」と話していた。