折り畳み自転車で観光ツアー 木次線利活用目指す

杉山匡史
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 英国製の小型折り畳み自転車を使い、島根県奥出雲町の住民たちが隠れた町内外の見どころなどをのんびり巡る貸自転車ツアーに挑んでいる。利用が低迷するJR木次線や路線バスも活用して上り坂を避けるなど、楽しさと地元への経済効果も考えた試みで、来春から本格的に始動する計画だ。

 11月21日、映画「砂の器」のロケ地の一つ・出雲八代駅(同町馬馳(まばせ))を発着点に「紅葉に包まれた線路沿いを下る」と題したお試しツアーがあった。

 地元で募った幼児も含む町民ら17人が午前11時すぎの列車に乗り込み、下久野駅まで一駅だけ乗車。降りて肩から下げた袋を開けると、小さく折り畳まれた自転車が姿を見せた。

 この日は、徳島県美馬市を拠点に英国製の折り畳み自転車「ブロンプトン」を使ったツアーを企画する旅行会社「AWA―RE(アワレ)」の榮(さかえ)高志さん(40)も同行し、助言。工具要らずで、子どもたちはあっという間に自転車を組み立てた。

 昼食を取る雲南市の木次駅前までは下り坂。3班に分かれて自転車にまたがると、穏やかな晴れ間のもと、ガイド役を先頭に川や線路に沿って進む。周囲の紅葉は鮮やかで路面に落ち葉の「わだち」も続く。畑作業の人は手を休めて優しいまなざしを送ってくれた。休憩した「秘密の鉄橋」下の広場では、タイミング良く出あった列車に手を振って見送った。

 折り返し前、駅前の和食店で「燃料」の昼食を補給して再開。春は桜で魅了する斐伊川沿いを走り、「願い橋(潜水橋)」は川面に映る姿も見ながら、自転車を押して一列で渡る。通行の邪魔にならないことを確かめて橋上で記念撮影。ツアー唯一の約20メートルの緩い坂は歩いて上り切り、木次駅に到着。今度は自転車を折り畳み、袋に入れて列車に乗り込むと、午後3時すぎに出雲八代駅に戻った。出発時と同様、到着した観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」を見送って解散した。片道約15キロ、往復約5時間の旅だった。

 父親と参加した布勢小学校6年の伊藤謙伸(けんしん)君(11)は「自転車は慣れたらすぐに組み立てられて走りやすかった。初めての景色も見て、列車の見送りもできて楽しかった」と満足げ。

 翌22日は沿線自治体の職員や観光関係者らに活動内容を説明し、情報などを共有する会合が開かれた。

 ツアーは奥出雲町布勢地区の魅力を発信しようと、地元有志が4月に立ち上げた「布勢の魅力活性化プロジェクト」(八沢(やさわ)豊幸代表ら7人)の活動の一つ。5月、駅前でメンバーらが始めた「ふせcafe」に、自転車による木次線の利活用を模索していた県職員と榮さんらが立ち寄ったことを機に話が弾み、ツアー作りに進展した。

 ツアー案は、この自転車に魅了されて2台購入し、当日は三男千和(せな)ちゃん(2)を背負って楽しんだ小倉さくらさん(37)を中心に考え、榮さんから借りた5台も使って試走を重ねたほか、徳島県での活動も視察。今回のコースと、地元の路線バスも使ってのんびりと巡るコースの二つを練り上げた。

 雪深い冬場は制約が多いが、機会を見ながら活動し、改善点を探る。来春には地元の人を案内役にした本格的な有償のツアーに仕立てる計画だ。

 八沢代表らは「町民も地元の良さを再発見する機会になる。町内の理解も深めながら、沿線に経済的な潤いをもたらす継続的な活動に育てたい」と意気込む。

 榮さんは「木次線は駅ごとに魅力的な場所がある。それらをつなぐ公共交通を有効活用したら面白いツアーができる」と期待した。

 ツアーの問い合わせは「ふせcafe」担当の内田圭子さん(080・1930・8362)へ。(杉山匡史)

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