函館線存続へユーチューバーとタッグ 北海道余市町

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鈴木剛志
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 北海道新幹線の札幌延伸に伴いJR北海道から経営が分離される函館線の函館―小樽間(約288キロ)のうち、余市―小樽間(約20キロ)の鉄路を残せないか、余市町が模索している。全国の鉄道の話題を発信しているユーチューバーと組み、同区間の窮状と地元の願いを伝え、鉄路存続のためのアイデアも募っている。

 町がタッグを組んだのは「鐵(てつ)坊主」さんという50代の男性。カナダに住みながら、函館線のような「並行在来線」問題など、日本国内の鉄道にまつわる話題を精力的に発信している。

 鐵坊主さんに目を付けたのは斉藤啓輔町長だ。「鉄道ファンの知見を世界中から吸い上げ、ユーチューブをシンクタンク的に活用しようと考えた」

 これまでに動画3本をつくり、10月に公開した。1本目では鐵坊主さんと、町役場で鉄路存続問題を担当する半田和気さんが、「人口減でも鉄路存続は可能か」などについて話し合った。

 鐵坊主さんが「メリットがないのになぜ北海道新幹線建設に同意したのか」と問うと、半田さんは「建設は道民の悲願で、経済効果も道の発展に重要。余市町に新幹線の駅はできないが、道全体のことを考えるとそう(同意)せざるを得なかった」と答えた。

 2本目には斉藤町長が出演。視聴者から寄せられた疑問などに答えた。「なぜ鉄路が存続できると考えているのか」という問いで斉藤町長が挙げたのが、営業距離1キロ当たりの1日平均旅客輸送人員を示す「輸送密度」だ。

 長万部―小樽間の9市町と北海道でつくる並行在来線対策協議会後志ブロック会議での議論が根拠にある。2019年7月の会議で斉藤町長はJR北に対し、利用者が1日あたり何人いれば黒字になるのかとただした。

 「輸送密度が『2千人以上』であれば、収支的には赤字だが、鉄道の特性が発揮できると考えている」というのがJR側の答えだった。

 18年度の長万部―小樽間の輸送密度は623人にすぎない。しかし、札幌市小樽市への通勤・通学客が多い余市―小樽間に限ると「2144人」だったからだ。

 ただ、人口減少などに伴い、将来にわたって2千人を維持するのは困難なのが現実だ。道の資料では、30年度に1493人、40年度に1194人、60年度には811人になるという厳しい数字が示されている。

 3本目の動画で鐵坊主さんは、現行の余市―小樽間のバス客が鉄道を利用するようになれば「2千人を維持できるのではないか」と提案。視聴者の「札幌から余市まで乗り換えなしの列車を運行させる」「ICカード乗車券を余市駅でも使えるようにする」などのアイデアも紹介された。

 動画3本の再生回数はこれまでに計約10万回。計1600以上のコメントが寄せられた。鐵坊主さんは取材に「視聴者からコメントを多くいただき、できることと、できないことを示せた」。斉藤町長も「我々では思いつかないようなアイデアをいただいた。詳細に検討し、別の手段も見極めたい」と話す。

バス転換でも巨額赤字予想

 鉄路存続か、バス転換か――…

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