列車内での凶悪事件に備えて制圧訓練 安全対策もコスト面厳しく
小田急線や京王線の列車内で刺傷事件が相次いだことを受け、県警鉄道警察隊は30日、JR千葉駅でJR東日本との合同訓練を実施した。刃物を持った男が駅構内に現れたという想定で、千葉駅の駅員と同隊員ら計約40人が参加した。
訓練では、犯人に扮した鉄道警察隊員が本番さながらの迫力ある演技で、「おりゃー」と威嚇。駅員らはさすまたを使って犯人役に立ち向かった。犯人の下半身を狙って壁におさえつけても、前かがみになって刃物を振り回されてしまったり、構えたさすまたの端を押さえられて斬りかかられてしまったりと、制圧するまでに苦労をしていた。
訓練の前には、県警の野村秋弘・逮捕術副主席模範による、駅員らに対する護身術講習会も実施。制服や腕をつかまれた時の振りほどき方や、さすまたでの制圧方法を伝授した。野村さんは「自分がケガをしないことを一番に、対応してほしい」とも指導した。
訓練後、駅員からは「いかに制圧が難しいかが分かった。連携して対応したい」「犯人から1歩引くという距離感を、やっかいな酔っ払いの対応にもいかしたい」などの声があった。
鈴木利幸・千葉駅長は、「県警と連携して対策に取り組むことで、お客様に安心して駅をご利用いただきたい」と話した。
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相次ぐ電車内や駅構内での殺傷事件を受けて、県内鉄道会社の安全対策はどうなっているのだろうか。
10月の京王線での事件以来、JR東日本では今回のような訓練を各支社で実施するなど、対策を強化している。防犯カメラの設置は五輪・パラリンピックのテロ対策の一環としてすでに進んでおり、在来線車両の録画用防犯カメラの設置率は8割以上だという。また、駅構内に防刃手袋やさすまたを配備しており、東武鉄道も主要駅に防御盾や催涙スプレーを置いている。
千葉都市モノレールでは、11月2日から警備を強化。18駅中14駅が無人駅のため、以前から夜間巡回はしていたが、新たに「警戒」と書かれた黄色い腕章を着けた駅員が車内や駅構内を巡回している。巡回強化は北総鉄道や新京成電鉄でも実施されている。
一方、車両への防犯カメラの設置率が1割程度にとどまる社もある。同モノレールでは防犯カメラの設置は、2019年12月以降に導入された4車両のみ。コロナ禍で収益が低迷しており、車両内や駅構内のカメラの増設、更新は費用面で厳しいという。
また、手荷物検査の実施については、旅客流動の妨げになる上、ゲートの設置場所の確保が難しいという社も多い。「手軽に乗れるという鉄道の良い面との兼ね合いにも課題がある」という声もあった。(竹中美貴)
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