路線バス減便で新交通システム検討 住民の請願書採択 能勢町

瀬戸口和秀
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 大阪府能勢町(人口約9500人)で今春、路線バスが減便され、一部区間が廃止された。利用者が減る中、町は赤字分を補助してきたが、「負担が厳しい」と判断したことが背景にあった。新たな交通手段が検討されているが、住民からは「生活が一変した」として、交通弱者への支援を求める声が上がる。

 「年金生活者にとってタクシーは大きな負担。通院の回数も減らさざるを得なかった」「通勤通学する方々にも影響している」――。8日の町議会の総務民生常任委員会で、町民の女性(79)が訴えた。

 女性はバスの減便などを受け、知人らの協力も得て289人分の署名を集め、「切れ間のない移動手段の早急な確保」などを求める請願書を9月に出した。今月8日の同委員会で賛成多数で採択され、翌日の本会議では全会一致で採択された。女性は「私だけでなく署名してくれた方々の思いを議会に受け止めてもらってうれしい」と話す。

 バスの減便などは、阪急バスから2019年3月、運転士不足などを理由にした協議の申し出があったのがきっかけだった。

 バスの利用者も減っていた。町内の二つのバス路線「西能勢線」「妙見口能勢線」の利用者数は19年度で約17万2千人と、10年度より半分近く減った。町は赤字分について西能勢線は一部を、妙見口能勢線は全額を補助してきたが、19年度は約3500万円に上り、10年度から5割以上増えていた。

 町は昨年10月から学識経験者や住民代表らによる地域公共交通会議を開き、新たな交通手段を考えていくことにした。町民に普段の外出状況や公共交通の税負担への意識などをきくアンケートもした。

 路線バスの見直しは今年1月に当初予定されたが、町は追加の補助金約1700万円を支払い、4月に変更に。だが「これ以上の財政負担が厳しくなっている」として、減便の影響を緩和するダイヤ改定案について阪急バスと調整に入った。

 結果、4月から西能勢線の一部区間で平日の5・5往復が2往復、土曜・休日の5往復が2・5往復に減るなどした。妙見口能勢線でも一部区間で平日の10便が8便に減り、土曜・休日は運休となるなどした。また二つの路線の一部区間が廃止された。これまでも減便などはあったが今回の規模は大きいという。

 新たな交通システムとして、利用者から予約があった際に運行する乗り合いタクシーが検討されている。平日を基本に対象の地区ごとに週3日、おおむね午前8時台~午後5時台に運行し、運賃は1回の乗車で300円(小学生以下は150円)。

 ただ実証運行の予定は来年7月ごろで、それまでの補完的な交通手段は現時点ではなく、減便などの影響を受ける町民は不便を強いられる。

 請願書を出した女性は「新交通システムが本格的に動き出すまでは補完の手立てを検討してほしい」と訴える。請願の紹介議員によると、買い物や観光、墓参り、帰省にも影響が出ているといい、紹介議員からは「(減便などから)1年以上も補完策がないのは見過ごせるものではない」などの声が上がる。

 上森一成町長は「限られた予算の中で減便による影響を最小限にとどめるべく対策を講じてきた。町内にはすでに公共交通が廃止された地域も多くある。今後総合的に判断したい」とコメントした。(瀬戸口和秀)

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