深まったマイレール意識 JR北海道「単独維持困難」の公表から5年

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佐藤亜季 井上潜 斎藤徹
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 JR北海道が、営業路線の約半分にあたる10路線13線区を「単独では維持困難」と公表して18日で5年となる。廃止・バス転換方針の5線区のうち3線区はすでに廃止。残り2線区も沿線自治体との協議が続く。地域住民の足となり、観光でも重要な役割を果たす鉄道だが、コロナ禍でのJR北の経営悪化、人口減で存続への道のりは厳しさを増す。地域と連携したコスト削減や利用促進の必要性がこれまで以上に高まっている。(佐藤亜季、井上潜、斎藤徹)

 「当初は鉄道存続自体が目的化していた地域も一部あったが、5年間の議論の中で、鉄道は事業者だけが頑張ればよいということでなく地域も関わる必要があるという『マイレール意識』が深まった」「まちづくりに必要な公共交通は何かという議論も深まり、『残す』から『いかす』という議論に進んだのが大きな進展だった」。JR北の島田修社長は10日の定例会見で、単独維持困難線区を公表してからの日々をこう振り返った。

 過疎地が多く、寒冷地で車両や施設維持コストもかかるJR北海道は、国鉄分割民営化当初から経営が危ぶまれていた。赤字を補う経営安定基金の運用益も超低金利で減り、人口減に加え空港・高速道路網の整備で、利用者は減少。2011年の石勝線特急脱線・炎上事故で安全対策コストはさらにかさんだ。

 そして16年11月、赤字路線13線区を単独維持困難線区として公表。このうち、極端に利用者が少ない5線区については廃止したうえでのバス転換を沿線自治体に提案した。

 当初は反発した自治体も、線区の赤字や利用の低迷などの現実を直視せざるを得なくなった。JR北からはバス転換での運行補助費用の提示もあり、「廃線やむなし」との声が多くを占めるようになった。

 19年4月には石勝線夕張支線、20年4月には札沼線北海道医療大学―新十津川間が廃止。21年4月には、沿線7町が多数決で廃線を受け入れた日高線鵡川―様似間が廃止となった。

 島田社長は「協議にタイムリミットを設けているわけではなく、強行廃止する計画もない」と述べる一方、「さらに5年、協議を続けていくということではなく、結論を出していくべき時期との認識の下、地域の公共交通体系をどうしていくべきか考える必要がある」と強調。早期の廃線・バス転換に向け、沿線自治体との協議を加速させる意向だ。

 5線区以外の8線区については、国や道、沿線自治体の財政支援や住民の利用促進を前提として存続させる方針。しかしコロナ禍で通勤通学客や外国人観光客が激減し、8線区の20年度の赤字は計134億6900万円にのぼる。

 島田社長は「今後ずっと、当社だけですべてをまかなっていくことはできないということは、はっきり申し上げておきたい。鉄道を持続的に維持するための運営コストを誰が、どのように負担するのか。きちんと答えを出していく必要がある」と話す。

廃線方針に反発、地元負担も争点

 JR北が廃止・バス転換の方…

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