いさてつ、実態知って 社員が高齢者大学で講義

三木一哉
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 北海道新幹線開業とともに木古内―五稜郭間の並行在来線が分離された第三セクターの道南いさりび鉄道(北海道函館市)。地域の鉄道としての現状を沿線住民に知ってもらおうと、北斗市の高齢者向け教養講座に社員を講師として派遣している。経営が厳しいなか、「いさ鉄」の魅力を発信するための試みだ。

 「北斗から函館へ移動するという使い方だけではもったいない。美しい景色をのんびり眺め、楽しむ手段として『いさ鉄』に乗ってみて下さい」。10月15日、北斗市の高齢者大学「きらめき大学」で、いさ鉄経営企画部の今村紳彌部長が約60人の受講生に語りかけた。

 今村部長は、北海道新幹線建設でこの区間がJR北海道から切り離され、バス転換か三セク鉄道として出発するしかなかったことや、赤字経営を自治体の支援でつないでいることなどを語った。「輸送人員は2016年度の1日2015人から、昨年度は3割減の1431人に。収入の多くは旅客ではなく、この線を通るJR貨物からの線路使用料に依存しています」

 収入増のための記念切符やタオルハンカチ、チョロQなど、オリジナル商品の開発や販売も紹介した。

 厳しい経営の一方で、鉄道の魅力もアピール。沿線の夜景や人気の観光列車「ながまれ海峡号」の取り組み、観光列車を盛り上げる地元商店街の駅立ち売りや函館水産高校による歓迎活動などをPRした。

 「格安の1日乗車券を駅近くの米屋さんが売ってくれたりする。それを見せると、飲食店で割引やソフトドリンクのサービスもある。これほど地元の応援を受けている鉄道があるでしょうか」と語った。

 函館へ向かう新幹線乗客を木古内で乗り換えてもらう作戦や、乗る旅そのものの魅力アピール、信頼できる公共交通があってこそ沿線の価値が上がるという効果を伝えることなどを今後の取り組みとして挙げた。

 受講生の男性(74)は「運行本数が限られ、あまり使っていなかったが、やはりなくしてはいけないと思った。乗って子孫に残したい」。「地元で割引乗車券が買えるかとか、情報発信が不足。知っていたら使っていたのに」(女性)という声も聞かれた。

 今村部長は「社会人経験のある人たちに向けた講座なので、難しい話も率直に伝え、利用に結びつけたかった。声がかかれば学校などでも話したい」と手応えを感じていた。

 市の高齢者向け教養講座は60歳以上の市民を対象に3カ所で開かれ、約240が参加している。いさ鉄を語る講座は、他の2会場でも開かれ、市教育委員会の担当者は「市も経営に関わる身近に走る鉄道は興味を引くテーマだと考え、初めて選んだ」という。(三木一哉)

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