父が残した本を後世に――。東京都青梅市の男性が、78年前に出版された蒸気機関車の解説本を復刻した。本は、国鉄職員だった父が大切にしていたもので、火事や廃棄処分の危機を乗り越え、手元に残されてきたものだ。「令和まで生き残った本を、少しでも多くの人に見てほしい」と話している。

 本は、旧鉄道省が1943(昭和18)年に出版した「蒸気機関車の変遷」。冒頭には、出版の経緯がこう記されている。

 〈鉄道開設七十年記念の祝典に当りその記念出版物の一として蒸気機関車の写真を集成し併せて簡単なる解説を加えて編纂するの議がまとまった〉

 B5判で268ページあり、明治初期~昭和初期に使われた車両の車籍一覧や、200以上の車両の写真とその所属や製造所などの情報を網羅。出庫準備や投炭練習などの写真も添えられている。

 鉄道史に詳しい放送大学の原武史教授は、「明治期の車両が多く、国有化される前に全国各地にあった私鉄所有の車両が豊富に載っている。国産に移る前の海外の製造所でつくられた車両が使われた時期の写真がこれだけそろっているのは貴重」と話す。

 復刻したのは藤野良一さん(70)。山口県下関市出身。父の孝平さんは国鉄職員で、寝台特急「あさかぜ」の車掌もつとめ、発車合図をする姿にあこがれていた。父が家に持ち帰り、良一さんが絵本代わりに枕元に置いて寝る前によく眺めていたというこの本は、その後、数奇な運命をたどる。

 長崎造船大学(現長崎総合科学…

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