伝統工芸ちりばめた新車両 烏丸線、コンセプトは優しさ

諏訪和仁
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 京都市交通局の地下鉄烏丸線で京都の伝統工芸がちりばめられた新型車が17日、関係者や報道陣に公開された。開業から40年間走り続けてきた車両に代わって導入され、車内は「みんなに優しい」がテーマ。来年3月半ばにも、営業運転を始める予定だ。

 新型車の1編成6両が同局竹田車両基地(京都市伏見区)で公開された。コロナ禍で、地下鉄は利用者が減少。大幅な赤字に陥り、京都市は運賃の引き上げを検討している。門川大作市長は「厳しいときだが、みなさんで地下鉄を愛していただくことが、経営改善につながる。みんなで市民の足を守っていかなければならない」と話した。

 「優しい」のは、先頭と最後尾の車両に設けた「おもいやりエリア」。約3・5メートルにわたって座席をなくし、車いすやベビーカーが乗り込みやすくした。大きなスーツケースなどの荷物も持ち込める。

 このエリアに京都らしさも込めた。寄りかかることができる「立ち掛けシート」は背もたれ部分が、展示スペースになっており、京友禅の工程ごとの生地や西陣織の織物が並ぶ。京友禅の展示は、20ほどある工程のうち、下絵や染め、金銀の箔(はく)や粉での飾り、刺繡(ししゅう)など七つを紹介している。

 ほかにも、両端車両にある同局名と車両番号を記した銘板は京象嵌(ぞうがん)で、つり革は北山丸太に京くみひもを組み合わせた。同局のマーク(局章)は、鎚(つち)でたたいて表面に細かな凹凸をつける鎚起(ついき)という伝統工芸の技を用いた。

 これら内外装の方向付けをしたのは同市の懇談会だ。そこで座長を務めたデザイン事務所顧問の吉田治英さんは「市民の足としても、観光客向けとしてもバランスがとれたと思う」と話した。同局によると、京友禅や西陣織は無償で作ってもらうなど、ほかの工芸も「かなり協力してもらった」と言い、高コストではないと説明している。

 新型車は2年前に発注し、9編成分(計54両)で税込み110億円。今年度納入されるのは、この1編成だけで、来年度以降に2編成ずつ納入される。消費電力は旧型車に比べて2割以上減らすことができ、ワンマン運転化にも対応できるという。(諏訪和仁)

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