昭和レトロな姿再び 北勢線の旧阿下喜駅舎、町中に復元

中根勉
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 建て替えで解体された三岐鉄道北勢線の旧阿下喜駅舎(三重県いなべ市北勢町)が復元され、開館日限定で一般公開されている。北勢線の存続活動や町づくりに携わってきた女性らが、1931年にできた旧駅舎の昭和レトロな姿を再現した。2006年の解体時に保存した部材を使って売店などを再現した。次回は18日に開館する。

 復元駅舎は現在の阿下喜駅からやや北の町の中にある。ホームなど一部は縮小しているが、当時とほぼ同じ大きさで、木造平屋建て約80平方メートル。旧駅舎を知る人は、なつかしく感じる外観だ。駅前からホームまで段差のない設計など、当時としてはモダンで使いやすい建物だったという。

 駅舎を復元したのは阿下喜に住み、「北勢線とまち育みを考える会(ASITA)」の代表でもある安藤たみよさん(59)と建築業を営む夫の信之さん(63)。

 安藤さんは、北勢線の運営会社だった近鉄が廃止を打ち出した00年、中学生と小学生の母親で、通学や町の存亡にかかわる問題だと考え、存続運動の先頭に立った。03年に存続が決まったあとも北勢線との町づくりを考え、現在の駅舎の近くに軽便鉄道博物館を開いて運営している。

 安藤さんは駅舎の解体時に部材の一部を保管していた。一昨年、「町のにぎわいのためにも、人が集まれる場所をつくりたい」と思い、自宅近くの土地を利用して、駅舎を復元させることにした。

 屋根の勾配などは、鉄道に詳しいASITA会員たちが採寸したりして記録を残しており、昔の写真や解体中の写真などを参考にして復元した。

 北勢線存続活動当時からの知人でASITAのメンバーでもある桑名市星見ケ丘2丁目、会社役員田中一彦さん(63)が旧駅舎の「駅長」になり、建物内の展示室の企画運営を担当する。田中さんは小学生のころからの趣味の鉄道模型を展示している。昭和の切手やおもちゃなど、幅のある企画を開いていく考えだ。

 毎月第1、3日曜(1月のみ第2、3日曜)に現在の阿下喜駅の横の軽便鉄道博物館が開くため、同時に旧駅舎も開く方針。旧駅舎が、現在の駅から阿下喜の町の中心部へと散策してもらうきっかけになればとの願いもある。問い合わせは安藤さん(0594・72・2478)。(中根勉)

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 北勢線 日本では数少ない762ミリ幅の狭軌で運行されるナローゲージ鉄道で、現在は桑名市の西桑名といなべ市の阿下喜を結ぶ約20キロの路線。1914(大正3)年に大山田と楚原間が開業、31(昭和6)年に阿下喜まで開通した。三重交通、近鉄などを経て2003年から沿線自治体の支援を受けて三岐鉄道が運営している。

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