パターンダイヤ、60年前も 旧国鉄の徳島・牟岐線

福家司
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 列車を毎時決まった間隔で運転する「パターンダイヤ」。JR四国の各線で導入が進んでいるが、約60年前の1960年当時の国鉄が徳島線と牟岐線に、パターンダイヤそっくりの「国電型ダイヤ」を、すでに導入していた。この経緯に詳しいJR東海初代社長で鉄道友の会会長の須田寛さん(90)が、朝日新聞の取材に応じた。

 パターンダイヤは、主に国鉄や大手私鉄の大都市圏を中心とする利用者の多い線区で実施されてきた。同じ種別の列車を30分、20分、15分、12分、10分、6分、5分ごとなど、60分を等分できる間隔で運行する。

 1960年当時、国鉄四国支社の旅客課長を務めていた須田さんによると、四国の国電型ダイヤは蒸気機関車の牽引(けんいん)する客車列車から脱却する「四国鉄道無煙化計画」の一環で、約30両のディーゼル車が導入されたのを機に決まった。

 当時の支社長は、のちに国鉄の常務理事を務めた矢山康夫氏。須田さんによると、「矢山支社長は愛媛県新居浜市出身の十河信二総裁の命を受け、四国の無煙化を推進するため来た」という。

 矢山さんの指示は「無煙化をコスト増を伴わずに実現するため、客車列車は朝夕のみとし、日中はディーゼル車で増発せよ」。その結果、「昼間は(1両ずつの)単行運転を原則とせざるを得なくなり、特定の列車に混雑が偏らないよう、等間隔ダイヤを考えた」と背景を語る。

 日中は徳島、牟岐、鳴門の各線をまたいで阿波池田―牟岐、鳴門―阿波富岡(現・阿南)と、徳島線の徳島―穴吹の3系統の普通列車の運転を実施。各系統ともおおむね60分間隔だったが、系統の重なる穴吹―徳島―阿波富岡間は30分ごとの運転だった。

 須田さんは「ダイヤ改正を時刻でなくパターン、時隔で宣伝する方式を導入した」と振り返る。新たなダイヤをPRするため、運転系統別に色分けした路線図のカード(裏面はカレンダー)も作った。

 「当時の徳島地区では、優等列車の準急が高徳線の1往復だけだったため、ダイヤ設定は容易だった」と須田さん。列車の増発で行き先表示板が足りなくなり、車両の正面に初めて方向幕を付けたエピソードも明かした。

 続いて、等間隔のダイヤは高知県土讃線土佐山田―須崎間、愛媛県の予讃線松山―伊予市間、高徳線でも実施された。

 ただ、乗客は増えたが、2~3両に増結せざるを得ない列車も出て、車両不足から一部の列車を運休せざるを得なくなった。さらに、郊外の道路の舗装が進んで路線バスに乗客を奪われ、モータリゼーションも進むなどして競争力がなくなり、各線の国電型ダイヤは数年で消滅したという。

 牟岐線徳島―阿南間では2019年3月から、徳島線徳島―穴吹間では今年3月からパターンダイヤが復活した。利用者が時刻表を見なくても乗れるよう、普通列車を等間隔に発車させることにより日中の利用増を図ることや、沿線の主要駅を発着する路線バスとの接続改善が狙いだ。

 須田さんは「あまりにも当時のダイヤと似ているのに驚いた。歴史は繰り返す、ということか」と懐かしむ。

 一方で、「当時は列車を出せば乗っていただける時代だった。今はそうではなく、JR四国の皆さんは大変苦労してこのダイヤを売り込んでいくことと思う」と後輩を思いやる。

 現在、JR四国のパターンダイヤは両線のほか、土讃線土佐山田―高知間にも導入されている。(福家司)

     ◇

 〈パターンダイヤ〉 同じ種別の列車を1時間(60分)で割り切れる決まった時間間隔で頻繁に運行するダイヤ。乗客にとっては時刻表で発車時刻を確かめる必要がなく、利用しやすくなるとされる。四国ではJR瀬戸大橋線の快速マリンライナーで30分間隔で実施している。高松琴平電鉄(ことでん)や伊予鉄道でも長年、15分間隔のパターンダイヤが実施されてきた。

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