JR在来線の「お医者さん」 高山線復旧にも貢献 岐阜

戸村登
【動画】東海地方の在来線守る「ドクター東海」=戸村登撮影
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 JR東海名古屋市)には、電車や列車が安全に走行できるか、軌道や架線などの安全性を確かめる「在来線のお医者さん」がいる。「ドクター東海」の愛称を持つ「軌道・電気総合試験車」だ。管内12路線のべ約1420キロを担当する「ドクター東海」が誕生して、今秋で四半世紀。岐阜県内での「往診」(検測)を取材した。

 ドクター東海Ⅰ号機(3両)が誕生したのは1996年。快速みえと同形式のキハ75形の気動車をベースに開発され、電化されていない区間でも検測が可能だ。2006年に、Ⅱ号機(同)が投入され、管内の全在来線を2編成体制で月に2回程度検測している。

 記者が同乗したのは「ドクター東海Ⅰ号機」。この日はJR高山、太多線を経由し、岐阜~多治見駅の約45キロの軌道にゆがみがあるかどうかを検測した。

 JR岐阜駅のホームで待機していると、まもなく3両編成の「ドクター東海Ⅰ号機」がやって来た。ドクター東海を見るのはこの日が初めて。新幹線の「お医者さん」のドクターイエローと同様、ドクター東海の先頭車両も黄色い。利用客が間違えて乗り込まないための工夫の一つだという。

 真ん中の車両に乗り込み、スリッパに履き替えて、車内に入る。パソコンやデータ処理装置に土やホコリなどで不具合を与えないためだという。通常の車両のような座席はなく、検測機器の間にモニター6台が設置されており、3人の検測員がスタンバイしていた。モニターには検測で得られる様々なデータが映し出される。

 動き始めると、運転台に設置している「沿線状況監視カメラ」の鮮明な画像が流れ始めた。運転台の運転士が見ている映像とほぼ同じで、迫力満点。同じ画面に、列車の揺れを可視化した青い線も映し出された。線の振り幅は揺れの大きさを示すという。検測で得られたデータは、線路を維持管理している保線区に送られ、異常が見つかれば、即座に修繕されるという。

 JR東海によると、1路線あたりの検査は月に2回程度。気動車の運転免許が必要で、路線を担当する運輸区には、気動車を運転できる運転士が必ず配置されているという。

 在来線の線路の保守などを担当する東海鉄道事業本部保線課の野村清順課長代理は「ドクター東海は軌道のゆがみを見逃さない。それゆえに当社の安全が維持されている」。

     ◇

 岐阜県内には山間部を走る在来線があり、ときには大雨などで被災し、長らく不通となることがある。復旧を終えた区間で運転が再開される前に、ドクター東海が検測することがある。

 2018年7月の豪雨で、JR高山線の角川(つのがわ)~打保(うつぼ)間(同県飛驒市)は土砂が流入し、盛り土が崩れたり、レールが流失したりして、仮復旧まで4カ月以上を要した。

 同年11月21日の運転再開前日、ドクター東海が角川~打保間を2往復して、軌道にゆがみがないか、大きな揺れが生じないかなどを確認し、列車の安全な走行に支障を来さない水準だと判断したという。(戸村登)

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