高齢者の移動、住民お手伝い 徳島・阿南でモデル事業

伊藤稔
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 徳島県阿南市で、買い物や通院などの移動手段がない高齢者を対象に、介護保険制度を活用した移送支援サービス「ご近所ドライブパートナー事業」が始まった。路線バスが廃止された加茂谷地区の一部でモデル事業として実施する。地元住民が主体となり、公共交通機関の空白地域で高齢者が生活し続けられるよう支援する。

 那賀川流域の山あいに集落が点在する加茂谷地区。サービスを開始した5月27日、事業を実施するNPO法人「加茂谷元気なまちづくり会」の山下和久会長(66)のマイカーにお年寄り2人が乗車した。

 片道20分以上かかるスーパーに向かい、食料品などを購入。隣のドラッグストアにも寄って、この車で自宅へ戻った。料金は乗車前と降車後の付き添いなどの支援に1回100円、往復計400円を支払った。

 2人はいずれも一人暮らし。井出光子さん(85)は普段、息子が必要なものを買ってきてくれるという。「自分の気に入ったものが買えるし、400円なので助かる」。佐竹ユクエさん(84)も「買い物ができてよかった。サービスはこれからもやってほしい」と笑顔を見せた。

 加茂谷地区は住民約1900人で、高齢化率は40%超。地区の一部では昨年10月、路線バスが廃止され公共交通手段がなくなった。一人暮らしの高齢者は買い物を近所の人や親族らに頼むなどしているが、孤立状態は強まっているという。NPOは高齢者の移動手段について、3年かけて関係機関と協議し、移送支援サービスを始めることにした。

 対象は要支援1、2の認定者ら。通院や買い物などに週1回利用できる。市内と市外5キロ以内まで送迎する。移送サービスの講習を受けたNPOの会員9人がマイカーやリース車で移送支援を担う。市はNPOに対し、乗降1回につき300円(往復で計1200円)の補助金と月額3万円の事務費を支給する。

 現在、サービスを希望する高齢者は5人。病院だけでなく新型コロナウイルスのワクチン接種に利用する予定の人もいるという。加茂谷地区でのモデル事業は来年3月までで、NPOでは周知を図り、利用者やドライバーを増やして事業を軌道に乗せたいという。

 山下会長は「路線バスが廃止され、不自由を感じているお年寄りが各地区にいる。将来的には地域住民みんなが利用できるシステムにしたい。いろいろな助け合いの輪が広がれば」と話す。市はモデル事業の効果や課題を検証し、他の地区にも広げていく方針だ。(伊藤稔)

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