大阪 隠れた名物の観光案内図が復活 南海汐見橋駅

鈴木智之 燧(ひうち)正典
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 レトロな駅舎で知られる南海電鉄汐見橋駅(大阪市浪速区)で28日、隠れた名物だった日本画風の観光案内図が新しくなり、5年ぶりに披露された。関西空港など様変わりした沿線の様子を反映した。4月にはトイレも新調されるなど、鮮やかな駅舎になった。

 1900年開業の汐見橋駅は高野線の始発駅だが、1時間に2本の各停しかない都会のローカル駅。通称「汐見橋線」と呼ばれ、全てが途中の岸里玉出駅(大阪市西成区)行きだ。1日平均の乗降客数は1962年度には4528人だったが、2019年度は647人に低迷している。昨秋には駅舎に壁画を施すなど、レトロとアートを売りに活性化を目指している。

 かつての案内図は昭和30年代の作とみられ、今はない淡路島の鉄道なども描かれていた。名物として利用者らに長く親しまれていたが、老朽化が激しく2016年3月に撤去された。同年のイベントで一部が販売されたが、鉄道ファンらからショックの声が上がっていた。

 新たな案内図は、幅約3・6メートル、縦約1・7メートル。コンセプトは「あの頃といま 変わったものと変わらないもの」。長く愛されたかつての案内図の印象を残しながら、観光名所のほか、1994年にデビューした関西空港行きの特急「ラピート」や、2009年に運行を始めた観光列車「天空」なども描き、旅情をかき立てる仕上がりになった。

 制作した大阪市の画家堀としかずさん(30)は「(前の案内図の)詳細な写真や資料が少なく難しかったが、楽しんで自分の表現もできた」。文字を担当した同市の書家岡本晃典さん(43)は「感慨深い。私の字はくせがあるので、いつもより読みやすくした」と話す。近くに住む40代の会社員女性は「前はボロボロだったのでなんとかしてほしかった。駅が明るくなって感じがいい」と喜んだ。

 駅舎内にあるトイレも新調された。男女共用の和式から男女別の洋式に変え、アートな色合いの内装にこだわった。レトロな雰囲気に合うように縦長の木目調のタイル壁や、洗面台の周囲は芸術風のモザイクタイルを施した。壁には列車運行の図表である「ダイヤグラム」(男女とも)、昔の車両の写真をあしらった以前の乗車用のカード(女子のみ)などを並べ、鉄道ファンにも喜ばれそうな内容になっている。

 南海の担当者は「新たな案内図が沿線に出かけるきっかけになれば。レトロな駅舎とともに新しいトイレにも親しんで」と話している。(鈴木智之、燧(ひうち)正典)

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