過去最大赤字のJTB、ボーナスゼロに 黒字化は不透明

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初見翔 今泉奏
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 緊急事態宣言の延長で、さらに厳しさが増すのが旅行業界だ。JTBが28日発表した今年3月期決算は、昨年来のコロナ禍の打撃で過去最大の赤字になった。大規模なリストラを進める中、6月以降も需要回復が見通せない状態が続く。

 政府が宣言延長を決めた28日、旅行大手JTBは、コロナ禍で苦境にまみれた2021年3月期の決算を発表した。山北栄二郎社長はオンライン会見で「これまでに経験したことがないような需要の消失があった」と振り返った上で、足元の宣言延長について「(人の)交流は抑制されるが、決定に従って粛々と対応する」と述べた。

 昨年来の旅行需要の大幅な落ち込みで、売上高は前年比71・1%減の3721億円に激減。最終的なもうけを示す純損益は、前年の16億円の黒字から一転、過去最大となる1051億円の赤字を記録した。立て直しのため、グループ従業員数の4分の1にあたる7200人の削減や、国内115店の閉店などのコスト削減を進める。従業員の年収を3割減らすため、この日はボーナスを22年夏までゼロとする方針も明かした。

 経営の安定度を示す自己資本比率は、3月末時点で前年比17・4ポイント減の6・9%まで低下。財務基盤を立て直すため、政府系の日本政策投資銀行から資本支援を受ける調整を進めているが、この日の会見で山北社長は「資本増強について検討を進める」と述べたものの具体的な金融機関や手法についての言及は避けた。

 だが、目先の財務基盤が強化できても、旅行需要が回復しなければ、根本的な経営立て直しにはつながらない。そのためには感染状況が落ち着くことが不可欠だが、新年度に入っても旅行需要は低迷が続く。

 観光庁が28日発表した全国の旅行業者への調査結果によると、回答した3103事業者の64・8%が、大型連休(5月1~5日)の利用実績がコロナ前の19年より「9割以上減った」と答えた。今回の緊急事態宣言の延長で、需要回復がさらに遠のくのは必至だ。

 JTBは22年3月期の業績予想は「合理的な算定ができない」と公表しなかった。山北社長は「なんとしても黒字化を実現する」と力を込めたが、達成できるかは不透明だ。

 危機の真っただ中にあるのは…

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