乗車率9割減でも高速バスに商機 「これに賭けたい」 

小川崇
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 新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークなどが広がるなか、通勤・通学者向けに都心と郊外をむすぶ高速バスの利用が減り、減便や運休が続いている。そんな逆風下で、新宿―八王子間の通勤高速バスが6月1日、新たに運行を始めるという。なぜ今なのか。試乗運行に参加し、わけを探った。

 新たに運行開始するのは、京王グループ・西東京バス(本社・東京都八王子市)の「通勤ライナー」。八王子市や日野市の住宅街など8カ所の停留所をまわり、日野駅(日野市)を経由して新宿駅西口に約2時間で到着する。

 運賃は現金で1100円(交通系ICの場合は1千円)。平日のみの計3便の運行で、朝の新宿行きが1便(午前4時39分に八王子市の「横川」発)、夕方以降の新宿発の2便(午後5時半発と同9時35分発で、経由が異なる)がある。

 5月25日に報道関係者向けの試乗運行があり、記者が参加した。この日は通常の運行時間とは異なり、午前10時半過ぎに八王子の折り返し場を出発。車内は4列シートで、各席にスマートフォンを充電するためのUSB型コンセントを配備。Wi―Fiやトイレもある。パソコン作業はひざの上でやる必要があるが、何もせず景色を見ていると眠くなる心地よさだ。

 ただ、やはり疑問に思ったのは、コロナ禍で高速バス会社の減便が続くなか、なぜこのタイミングで新規運行するのか、という点だ。

 同社によると、新型コロナ前と比べ、高速バスの乗車率は9割の大幅減で、路線バスの利用も減ったという。そこで、同社の営業エリア内を対象に、都心に向かう人たちがどんなルートを利用しているか、人の流れを調べたところ、主に路線バスや電車などで八王子駅まで行き、JRの中央線京王線に乗り換えるケースが多いことがわかった。

 これらの人たちに高速バスを利用してもらおうと、住宅街を回って都心まで直通で結ぶルートを考案。座席や手すりを拭くメディカルシートを常備するなど、コロナ対策にも力を入れることで「コロナの時代の新しい通勤スタイルで、商機があると判断した。これに賭けたい」(泊依里課長補佐)という。

 通勤向けの高速バスといえば、東京湾アクアラインを経由する路線が代表的だ。千葉県木更津市のバスターミナルから、東京や品川、川崎や横浜駅などに向かう。木更津・袖ケ浦―新宿駅間を運行する小田急シティバスは、コロナ下で便数を通常の2割減らしたが、「利用者は戻ってきている」という。定員約50人に対して乗車率は半分以下。「以前の通勤時間帯は比較的多かったが、いまは密集することはなく、快適といえば快適だ」と担当者は話す。

 神奈川県から木更津市に移住し、17年近く横浜までバス通勤するシステムエンジニアの男性(49)は、リモートワークが増えてバス利用が減ったという。「テレワークで郊外への移住が増え、都心に週数回通うというスタイルがでてくるのではないか」

 東急バスは今年2~4月、バス車内で仕事ができる「シェアオフィスバス」を試験的に運行した。横浜方面から渋谷・東京駅まで直結の高速バスだ。「乗車と同時に快適に仕事ができる」として、備え付けテーブルやインターネット環境を整えた。利用数は低かったが、「認知度向上に課題があり、今後サービス設計を検討したい」という。(小川崇)

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