狭い道もルート、乗合タクシー発進 かつらぎ町

高田純一
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 バスのように決められた路線を走る「デマンド型乗り合いタクシー」の運行が、4月から和歌山県かつらぎ町で始まった。過疎化が進む地域で公共交通を維持する取り組みで、通院や買い物に利用するお年寄りらから好評を得ている。

 乗り合いタクシーは、町が運行するコミュニティーバスを再編する形で導入された。もともとあったバス5路線のうち2路線と1路線の一部を存続したうえで、廃止される2路線や区間を中心に、タクシーで走る四郷、笠田西部、河南西、河南東、妙寺の5ルートを設けた。地域と駅や病院、スーパーのある地区を平日3往復する。最大4人で乗り合いとなる。

 町によると、コミュニティーバスの運行は、2002年から始まったが、人口減などで利用率が下がっていた。19年の利用者は1日平均53・1人。中学生以上は150円で乗れたが、運賃だけではまかなえず、運行会社に約3200万円の補助金を出していた。

 ただ、町の高齢化率は39・3%(3月末現在)。自身で車が運転できないなど、移動手段が乏しい「交通弱者」も多く、一概にバス路線を廃止する選択はできなかった。

 そこで町が目を付けたのが「デマンド型乗り合いタクシー」だった。タクシーは事前予約制。バスと違い、予約があったときだけ走らせるため、効率的な運行が期待できる。また、道幅の狭い地域も走ることができ、利用できる地域で利便性も高くなるとして、町が再編を進めた。

 タクシーとバスは乗り継ぎができ、運賃は中学生以上200円、小学生以下が100円。今年度、委託するバスとタクシーの会社に計約3千万円の補助金を計上した。

 バス路線の廃止区間にある背ノ山地区に住む山本悦子さん(73)は、タクシーの形で公共交通が維持されたことに「とても助かっている。これまで通りの生活ができて安心している」と胸をなでおろす。

 これまでと同様、多いときで週3回、3キロほど離れたスーパーへの買い物や、県立医科大学病院紀北分院への通院に使っている。21日午後も美容院に行くため利用した。

 また、町北部の山あいにある大久保地区では、これまでコミュニティーバスに乗るには約2キロ離れた停留所までいかなければならなかった。地区の道幅は狭かったが、タクシー路線の導入で新ルートに組み込まれ、利便性が高まった。運行を受託しているタクシー会社「有交紀北」によると、これまで通常のタクシーで往復7千円かけて買い物していたが、往復400円で済むようになった住民もいるという。

 町によると、4月末までに全ルートから予約があり、計136人が利用した。町の上野由佳総務課長は「持続可能な公共交通を目指し、コミュニティーバスを再編した。町内は交通の空白地域がまだあり、この乗り合いタクシー路線を増やし、解消に努めていきたい」と話している。

 乗り合いタクシーは、第1便が前日までに、第2便以降は運行時刻の1時間前までに予約が必要。予約先は有交紀北(0736・22・3333)。(高田純一)

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