大湊線開通100年 郷土史研究グループが地域誌で特集

安田琢典
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 野辺地駅(青森県野辺地町)と大湊駅(同県むつ市)を結ぶJR大湊線が、今年で開通100年を迎える。下北半島郷土史を研究するグループ「うそりの風の会」が、詳細な年表と今昔がわかる写真をふんだんに使った特集記事をまとめ、地域誌で紹介している。

 グループの会長で、むつ市内で燃料販売店を営む祐川清人さん(75)によると、大湊線は1916(大正5)年に着工した。18年から19年にかけて「スペイン風邪」が流行して労働力が不足し、当初の見込みより完成が遅れたものの、21年に全線開通した。

 当初は小型の蒸気機関車が列車を牽引(けんいん)。明治時代には佐井村まで延伸する計画もあったが、日清戦争で経済が疲弊したため、頓挫したという。60年にはディーゼルカーが導入され、近年では2010年に駅舎がリニューアルされた。

 祐川さんが大湊線に興味を持ったきっかけは、インターネットで入手した1冊の古書。1922年に当時の鉄道省がまとめた報告書「軽便鉄道大湊線建設概要」だった。

 「軍事的に使われていたことなど、これまで知らなかった内容が多かった」と振り返る。2016年に著書「下北の鉄道と軌道」を出版。今年が開通100年にあたることから、グループ副会長で市脇野沢庁舎所長の工藤和彦さん(58)らと協力し、著書をもとに改めて特集記事にまとめた。

 工藤さんにとって、子どもの頃に初めて乗った鉄道が大湊線だった。青森行きの列車に乗り野辺地駅に着いた後、列車はいったん背走してから東北線に入る。工藤さんは「いきなり後戻りしたので、かなり慌てた記憶がある」と懐かしむ。

 乗客の減少から大湊線は過去に幾度となく廃止が取りざたされ、同じく下北半島を走った大畑線は、下北交通に譲渡されたものの、01年に廃止された。

 今も地域住民の貴重な足として愛される大湊線について、祐川さんは「高齢化が進む地域にあって、鉄道は欠かせない存在。あるのとないのでは地域に与えるインパクトが異なってくる。何としても末永く残していきたい」と話す。

 特集記事が掲載された地域誌「うそりの風 第6号」は、県内の主要書店で販売している。問い合わせは工藤さん(0175・34・9786)。(安田琢典)

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