台風被災の別所線 輝き再び 全線開通

滝沢隆史
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 上田電鉄別所線長野県上田市)は28日、一昨年の東日本台風で鉄橋が落ちて不通になっていた上田―城下駅間で運転を再開した。1年5カ月ぶりとなる全線開通を祝って運賃が終日無料になり、復旧を待ちわびた大勢の地元住民や鉄道ファンらが乗り込んだ。

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 臨時の1番列車は午前5時55分、約200人の乗客を乗せて上田駅を出発。別所線上田駅の児平高明駅長は「久しぶりにホームに活気が戻り胸が熱くなった。全国からたくさんの応援をもらい、さび付いたレールが再び輝きを取り戻した。安全安心を心がけ、ローカル線の役割を果たす」。沿線では多くの市民が電車に手や旗を振って見送った。

 再建したシンボルの赤い鉄橋「千曲川橋梁(きょうりょう)」では、赤羽一嘉国交相や阿部守一知事らが駆け付けて記念セレモニーを開いた。地元の小学生らが乗った記念列車が鉄橋付近で停車し、テープカット。上田電鉄の山本修社長は「『赤い鉄橋を残してほしい』という応援に応えられたことが何よりうれしい」と感慨もひとしおの様子。赤羽国交相は「鉄橋の部品を再利用して(上田電鉄が)経費削減に努めるなど、今後の地方の被災鉄道の復旧モデルになる」とたたえた。

 別所線の終着駅別所温泉(同市)。温泉旅館組合がホームで温泉まんじゅうを振る舞ったり、地元の中学生が電車の到着に合わせて吹奏楽を演奏したりして観光客を出迎えた。コロナ禍で旅館の経営は苦境が続くが、組合役員の鈴木隼人さんは「年末年始のようなすごい人出。久しぶりの明るいニュースだ」と開通を喜んだ。

 上田市周辺で新型コロナウイルス感染者が急増していることを受けて、一部列車で密を避けるために人数制限をした。上田駅などでは記念切符の販売など関連イベントでにぎわったが、物産展など一部は中止になった。(滝沢隆史)

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