昭和を駆けた観光列車が「別邸」に 線路も敷く凝りよう

大畠正吾
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 昭和初期から観光客らを乗せて走った旧耶馬渓鉄道の車両3台が、大分県中津市万田でホテル「汽車ポッポ『別邸』」として生まれ変わった。駅舎などを再現した建物に車両を1台ずつ収容。鉄道ファンだけでなく、ホテル好きにも利用されている。

 車両は旧耶馬渓鉄道で使われた気動車「キハ102かわせみ」(1935年製造)と「キハ104せきれい」(37年)、旧国東鉄道が発注し、耶馬渓鉄道も走った「キハ602しおかぜ」(56年)。

 それぞれの車両をリニューアルし、客室や寝室に仕上げた。運転席は残し、線路と枕木を敷いた上に車両をのせる凝りようだ。ソファやバスルーム、洗面所も整っている。事業費は1億5500万円。

 各部屋には景勝地をテーマにした物語性を持たせた。かわせみを使った「青の社(やしろ)」(82平方メートル)は、青の洞門をテーマに石張りの壁を各所に配置。ソファやシングルベッド4台も置いた。せきれいの「耶馬渓の社」(89平方メートル)は旧守実(もりざね)温泉駅(山国町)に停車する寝台列車をイメージ。重厚な質感の内装が郷愁を誘う仕立てだ。

 旧耶馬渓鉄道は1913年、中津駅(中津市)と守実温泉駅間の36キロを結んで開通。山国川沿いの景観が楽しめる「観光列車」としても親しまれたが、75年に廃線になった。

 ホテルを経営する伊藤太陽さん(47)の父、故吉英さんが70年代にこの車両を購入し、一時は民宿の食堂などに利用していたが、最近は雨ざらしで傷みが激しかった。伊藤さんは「両親の思い出の詰まった車両を生かしたかった」。

 昨年12月10日にオープンすると、家族連れや男性グループが関西や東海地方からもやって来た。JRでの勤務経験もある支配人の木村春子さん(50)は「車両の外と中の世界とのギャップに驚く人が多いですね」。コロナ禍で客足は期待通りとはいかないが、リピーターも出ているという。

 中津の観光の拠点をめざす伊藤さんは「耶馬渓などの地域と歴史を知る場所になれば」と期待する。

 料金は3室とも同じで、1泊2食付き(2人利用)で1人1万8千円(平日、税込み)。問い合わせは汽車ポッポ(0979・22・0275)へ。(大畠正吾)

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