九州新幹線、全線開業から10年 鹿児島中央駅で神事

小瀬康太郎 ライター・知覧哲郎
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 九州新幹線の全線開業から12日で10年を迎えた。鹿児島が舞台の大河ドラマ「西郷どん」が放映された2018年度に、輸送人員が最多の約1434万人を記録。西日本全体の人の行き来を後押ししてきたが、昨年から続くコロナ禍で大きな打撃を受けている。

 鹿児島中央駅のホームで12日早朝、博多行きの始発列車の出発を前に、今後の安全運行を祈願して鹿児島中央、川内、出水の各駅長らが集まって神事が行われた。小林健太郎・鹿児島中央駅長は「多くのお客様に利用していただき、感謝の一言です」と話した。

 九州新幹線は04年3月に新八代―鹿児島中央間が部分開業。11年3月に博多―新八代が結ばれ、全線が開業した。JR九州によると、18年度に輸送人員が約1434万人、運輸収入は約549億円に達したが、新型コロナウイルスの感染が拡大した20年度は、12月時点で約525万人(前年同期比52・9%減)に激減。運輸収入も約167億円(同60・4%減)に減ったという。

 現在の運行本数は1日(平日)に121本だが、新型コロナの影響で13日から107本に減便する。昨年は3~6月に計1967本が運休したという。

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 九州新幹線の沿線3県(福岡、熊本、鹿児島)のシンクタンクは、全線開業から10年間の経済効果や影響に関する調査結果をまとめた。鹿児島県内の企業の6割がプラスの影響があったと評価する一方、福岡へ買い物客が流れる「ストロー現象」の一端もうかがえた。

 九州経済調査協会(九経調、福岡市)、地方経済総合研究所(熊本市)、九州経済研究所(鹿児島市)の3機関が共同で調査し、2日に発表した。

 企業活動について、沿線3県に本社がある企業にアンケートした。県内企業の40・2%が新幹線が「プラスの影響を与えた」と回答し、23・8%が「ややプラス」と答えた。

 鹿児島市の企業に限ると、7割以上がプラス評価だった。一方、熊本県内の企業は「プラス」と「ややプラス」を合わせた割合は55・6%、福岡県は45・1%だった。

 また、新幹線の開業を受けて、3県の企業の31・5%が活動を強化したと回答。具体的な事業として新規顧客の開拓(63・4%)、人材募集活動(41・6%)、既存顧客の訪問(35・6%)が挙がった。

 高校生の就職にも影響があった。鹿児島から福岡県に就職した生徒の数が2010年度に175人だったのに対し、19年度は345人と倍増。宮崎県でも同様の傾向がみられ、九経調は、新幹線の開業で「南北の心理的距離感が縮まったのでは」とみる。

 一方、沿線住民への調査で、鹿児島県民の14・7%が福岡市への買い物の頻度が増えたと回答。熊本県民は22・0%だった。南九州方面への買い物頻度が増えたと答えた福岡県民は7%弱にとどまった。

 山陽・関西地方との交流も増えた。国土交通省の調査を分析した結果、10年度と比べ、18年度は関西地方から鉄道で鹿児島を訪れた人(定期券を除く)が2・71倍に増加。中国・四国地方から訪れた人も2倍以上になったという。

 3機関は「新幹線の開業は、九州南北間の交流を促しただけでなく、西日本の交流促進に貢献した」としている。(小瀬康太郎)

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 九州新幹線の全線開業10年を記念して、鹿児島、熊本両県の沿線駅などで販売されている21種類の駅弁を対象に、JR九州が人気投票を実施している。5月31日まで。

 鹿児島は「黒豚横丁」(鹿児島中央駅など)や「百年の旅物語 かれい川」(嘉例川駅)など13種類、熊本は「くまもとあか牛ランチBOX」(熊本駅)や「栗めし」(人吉駅)など8種類をエントリー。駅弁に貼られたシールのQRコードにアクセスして投票できる。

 味や盛りつけ、パッケージへの評価をもとに、優勝と準優勝を6月ごろに発表。投票した人の中から抽選で100人に、鹿児島と熊本の食材を使ったレトルトカレーが贈られる。

 鹿児島中央駅構内の「鹿児島銘品蔵」には県内の駅弁11種類が並ぶ。大西里江子店長は「晴れた日に公園で、と買い求める地元のお客もいて、売れ行きは順調。熊本には負けられません」。

 投票対象の駅弁はJR九州のホームページ(https://www.jrkyushu.co.jp/train/kuma_to_shika/ekiben2021/index.html別ウインドウで開きます)に掲載されている。(ライター・知覧哲郎)

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