LRT増額問題、市長「見直しは2018年11月から」

中村尚徳
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 【栃木】宇都宮市議会定例会の代表質問が4日あり、各会派からLRT(次世代型路面電車)に関する市の対応に質問が相次いだ。200億円近い増額となった事業費見直しについて、佐藤栄一市長は「2018年11月から検討を始めた」と初めて具体的な時期をあげて説明した。

 事業費増額の試算が載った朝日新聞が入手した資料は、市が検討を始めた翌月の「18年12月」に作成され、事業費見直しの一環で作成された可能性がある。

 佐藤市長は事業費増額が明らかになった1月以降、コロナ禍の影響に伴う事業費見直しなどを昨夏ごろに指示し、全体を見渡せるようになった昨年11月以降に精査した金額として1月に報告を受けた、と説明していた。

 この日の答弁では、工事着工後の19年10月にも、LRTの担当者から、事業費の精査を進めており、精度の高いものが出た段階で改めて報告するとの説明を受けた、などと明かした。

 昨年11月の市長選前に公表しなかったことについて「市民からは隠蔽(いんぺい)、背任との批判がある」とただされた佐藤市長は、1回目の質問には答弁せず、再質問に「増額を知ったのは今年1月。選挙の公正さはゆがめられていない」と改めて否定した。

 検討中のJR宇都宮駅西側への延伸について、住民投票を実施するべきではと問われたのに対し、高橋功建設部長が「住民投票をすることなく進めていくことが適切」と答えた。

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 4日の各会派の代表質問で、LRT事業費超過に関する朝日新聞の報道が取り上げられた。2018年12月の試算が記載された内部資料について、市側は「承知していない」と答弁。ただ、記者の情報公開請求に対し、市は5カ月近くたった現在も、一部文書しか開示していない。

 記者は市長選告示1カ月前の昨年10月9日、LRT事業費に関連する情報公開を請求した。市側が請求範囲を絞り込んでもらいたいとしたため、「18年度以降、事業費に関して市が作成した文書」と請求し、13日付で受理された。

 市情報公開条例では、原則15日以内に開示しなければならないとしている。しかし、情報量が多いとの理由で10月27日に公開決定の延長が通知され、市長選後の11月26日、1回目分として予算や決算関係の文書と基金運用状況審査意見書の計233枚のみが開示された。求めていた未公表の協議資料などは開示されなかった。

 市は1月27日に支出負担行為決議書199枚を開示したが、なお協議資料は公開されず、3度目の公開決定の延長が通知された。記者は取材で入手した資料の日付を特定し、新たな請求も出したが、4日現在、開示にいたっていない。

 これまでの取材に対し、市幹部は「似たような資料はあるが、記載の内容についてはコメントできない」などと資料の存在を否定していない。

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