三陸鉄道の復興、絵本に 「震災、多くの人に伝えたい」

大久保泰
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 東日本大震災で線路が寸断された三陸鉄道の復興を描いた絵本「リアスのうみべ さんてつがゆく」(岩崎書店)が出版された。作品に携わった詩人とイラストレーターが17日、岩手県宮古市の三鉄本社で記者会見し、「震災を多くの人に伝えたい」と思いを語った。

 文章を手がけたのは久慈市の宇部京子さん(69)。震災から5日後に久慈―陸中野田駅間で運転が再開され、自宅近くで列車の音を聞いた。「目の前が真っ暗な時に三鉄が少しでも助けようと走ってきてくれて勇気をもらった。自分たちもがんばろうと思った」。その体験を元に「ひとえきふたえきとせんろをのばして、さんてつがちっちゃいからだで、みんなをはげますんだ」とつづった。多くのボランティアが三鉄の駅から降り立ったことも書いた。

 宇部さんは2019年3月にリアス線として全線開通する前に「走れ!三陸鉄道(さんてつ)」を作詩し、地元の合唱仲間と歌い続けている。震災10年が近づき、宇部さんは内陸部の知り合いと話をする中で、震災への関心が薄れているのを感じた。「災害はいつ起こるかわからない。命を大切にすること、未来の子どもたちが幸せであることを願いながらお話をつくった。本を見て三鉄に乗りに来てほしい」と話す。

 盛岡市のさいとうゆきこさん(40)は、震災をテーマにした小説「岬のマヨイガ」(講談社)の本の装画や挿絵を担当した縁で今回、声をかけられた。リアス線が走る大船渡市盛から久慈市の間を車や列車に乗って回った。「かつて栄えた集落があったことや、港付近に新しい建物ができているのがわかった」。この10年の変化を感じた。

 さいとうさんは「震災を知らない子に、こういうことがあったんだよ、こんなに頑張った人たちがいたことを知ってほしい」と話した。(大久保泰)

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