福島県中部の須賀川(すかがわ)市にある福島交通の「上梅田」バス停が、米大統領選で勝利が確実になった民主党のジョー・バイデン氏と同じ「じょうばいでん」と読めると、地元で話題になっている。山口県宇部市にも同名のバス停があり、にわかに注目が集まっている。

 バス停があるのは、田んぼの中に集落が点在するのどかな地域を通る片側1車線の市道沿い。バス停と横にある待合所には、大きな文字で「上梅田」と表示されている。読み方は「かみうめだ」だが、音読みすると「じょうばいでん」――。

 福島交通によると、JR須賀川駅や郡山(こおりやま)駅を発着する路線バスの停留所の一つ。主な利用者は通学の小学生といい、平日は午前7時1分、最終は午後6時35分の上下合わせて18本。土日祝日はさらに減り、10本だ。

 バス停の近くに住む加藤英子さん(67)は訪ねて来た妹の塚目和子さん(64)と「びっくり、びっくり」と盛り上がっていた。毎日見るバス停だが、「かみうめだ」以外の読み方を考えたことはなく、大統領選の最中も特別なひらめきはなかったという。

 加藤さんは「よく気づく人がいるもんだ。今朝もバス停の写真を撮りに来ている人がいて、驚いた」。塚目さんは「こうなればバイデンさんにも親近感がわくね。ちょっとでも地域が盛り上がればうれしい」と話した。

 福島交通須賀川営業所の長田春治所長(65)は「コロナ禍でバスの利用者が減っていたが、久しぶりに明るい話題。『梅田』と言えば大阪が有名だけど、『上(じょう)』がある分、こっちのほうが似ているでしょ」と誇らしげ。バス停の周りには専用の駐車場はなく、「見学に行く際は、ぜひ当社のバスのご利用を」とPRを忘れなかった。

 一方、山口県宇部市の国道190号沿いにも市営のバス停「上梅田」がある。SNS上で話題になり、標識の写真を撮る人が増えている。市交通局は9日、文字がかすれていた標識に、新たに名前が書かれたシールを貼り付けた。

 路線バスの担当をしている古谷信弘さん(45)は「バス停や路線バスが話題になってうれしい」と喜ぶ。名前を使ったグッズ製作など、利用者を増やす取り組みを検討中だという。

 かつて炭鉱の町として栄えた宇部市。上梅田地区にも炭鉱労働者が住んでいた長屋が並ぶが、今は多くが空き家になっている。地域で生まれ育った渡辺保尊さん(69)は「地域が有名になり、にぎわいが戻れば……。バイデンさんにはできるだけ元気に長く続けてもらいたい」と語った。(力丸祥子、山崎毅朗)