間もなくズワイガニの季節 「加能ガニ」に変化も?

岡純太郎
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 冬の味覚ズワイガニの季節がやってくる。東京など首都圏では、北陸新幹線にまたがったズワイガニのポスターも話題になり、新型コロナで打撃を受けた観光業界は期待を膨らませる。だが、足元では「加能ガニ」を巡る、気になる情報がささやかれている。

 石川県漁協によると、加能ガニは、県内の漁港で水揚げされたオスのズワイガニで、甲羅の幅が9センチ以上のものを指す。大きな甲羅とツメ、脚が特徴で、身の詰まりが良く、食べられる部分が多い。高品質を証明する青いタグには水揚げされた漁港の名が書かれ、市場やスーパーに並ぶ。

 命名は14年前の2006年。この年9月、水産振興や事務の効率化を図るため、27団体が合併して「石川県漁業協同組合」が誕生したことと関係する。

 当時を知る漁協関係者によると、合併の記念として、県産ズワイガニの名称を公募。1カ月半で1千通を超える応募があり、当時の漁協幹部らが話し合った結果、「加能ガニ」が採用になったという。

 加賀地方の「加」と能登地方の「能」からなり、合併した県漁協の一体性を表しているとの理由だった。この関係者は「ブランドとして売り出すという明確な意図はなく、愛称のようなものだった。各団体の顔を立てた部分もあった」。応募作には、加賀前田家初代藩主の利家からとった「利家ガニ」、日本三名園の兼六園にちなんだ「兼六ガニ」などもあったという。

 同年11月の初競りから加能ガニの名称が採用された。

 その後、北陸新幹線の開業効果で観光客が増え、加能ガニの需要は高まった。

 県漁協によると、開業後の15年には、1キロ当たりの競り値が前年の約3割増しに。それ以降も同水準の値段を維持してきたという。

 また、「香箱ガニ」と呼ばれるメスのズワイガニも、金沢の冬の名物「金沢おでん」の一品として、観光客に知られるようになってきた。

 だが、今年は新型コロナウイルスの影響で、水産物の需要が低迷。加能ガニも「例年通り売れるのか」と漁業者の間に不安が募っているという。

 もともと、福井県の「越前ガニ」や山陰地方の「松葉ガニ」に比べると、全国的な知名度で劣っているという意識もあった。

 そこで、かなざわ総合市場や金沢市は今年から、同市場で扱う加能ガニに「金沢」を加え、「加能ガニ金沢」として売り出す方針だ。県漁協の福平伸一郎常任理事は、県内で水揚げされた魚価が4~9月期に約1割下がったとし、「加能ガニにも影響は出る。少しでも価格を安定させたいと考えた」と説明。一体性を表す「加能」の精神に変更はないとしつつ、「今後は加能ガニでも、各漁港や地域の独自性を売りにしていくかもしれない」との見方を示した。

 ズワイガニ漁は全国一斉に11月6日に解禁される。(岡純太郎)

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