再開発進む福井駅前 福井市「関与せず」見えぬ全体像

平野尚紀
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 2023年春の北陸新幹線福井開業に向けて、JR福井駅前で民間主体の市街地再開発が進んでいる。複数のマンションやホテル、商業施設が立ち並ぶことになり、駅前の活性化に期待が持たれる。一方で、それぞれの計画が個別に動き、十分に連携できていないのも実情だ。(平野尚紀)

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 「三角地帯」と呼ばれる駅西口の駅前電車通り北地区では、10月から本格的に工事が始まった。商店のシャッターが下り、アーケードは解体。一部歩道が通行止め、一部車道は1車線になった。今後、東側のA街区と西側のB街区で、それぞれ開発が進んでいく。

 A街区には、マリオット系列のホテル「コートヤード・バイ・マリオット福井」やオフィス、カンファレンスホールが入る27階建てのホテル・オフィス棟、駐車場棟、28階建てのマンション棟の建設を予定。各低層階に商業施設が入り、飲食店をそろえた「フードホール」が目玉となる。B街区には医療・福祉、商業施設の建設計画がある。

 駅西口南側の駅前南通り地区は「食と健康のストリート」をコンセプトに、3ブロックでの計画がある。①食をテーマにスーパーなど②低層階にクリニックや薬局、介護施設、高層階にホテル③ホテル宿泊客や地元住民が入れる銭湯やマンション、駐車場、会社や学習塾などの業務施設――を設ける構想だ。

 南北の中間にあるスーパー「ハニー」跡地でも再開発が進む。15階建てマンション「デュオヒルズ福井駅前」とその駐車場棟、商業棟、1階に店舗、2、3階に金融機関が入るオフィス棟の4棟構成で、建設中のマンションと駐車場棟、オフィス棟は21年春から利用可能の予定だ。商業棟は年度内に着工、約7カ月でオープンの見通しという。

 一部計画には新型コロナウイルスの影響も出ているという。一つがテナント誘致面。全国的に新規出店が控えられ、福井駅前の再開発でも計画が遅れるケースが出ている。ただ、計画が遅れても、コロナの影響を踏まえ、採算を考えた上でテナントに入るかどうか決めてもらえるのはいい、との見方もあるという。

 大規模施設が複数できることによる市街地活性化への期待は膨らむが、駅前の将来像という点で考えると疑問符が付く。各事業者が個々に計画を進めているために一体感がなく、どんな駅前にしたいのかというビジョンが見えてこない。

 市は「事業者の判断にお任せする部分はある」との立場で、ホテルの充実による観光需要の強化、マンションが住まいの選択肢を広げるなどのメリットを示し、現在の各計画は「市としても望ましい」とする。

 ハニー跡地の再開発事業者「元町開発」(福井市)は、マンションならライフステージによって住み方が変わるため、「長い目で見れば常に新しい需要が生まれる」とする。デュオヒルズ福井駅前は多様な間取りが売りの一つで、様々なライフスタイルに対応可能という。市には「(各事業者が)同時期に同じようなテナント誘致を狙う場合があり、全体の調整をうまくしていただけたら」と望む。

 駅前には観光地が少なく、にぎわいの拠点づくりを求める声もある。その答えの一つとして、駅前南通り地区市街地再開発準備組合の担当者はアミューズメントの要素を挙げる。「行政が例えば恐竜を使った施設など、福井のよさを生かし、駅前に人が集まるものを作ってほしい」と話す。

 市の担当者はテナント誘致などの調整について、「『他に空き店舗もあるのに、なぜ再開発だけ市が関与するのか』にもなる。市が関与する立場にないのを理解していただきたい」。拠点づくりについては「まちなか観光が弱いのが市の課題」として、福井城址(じょうし)一帯の歩道整備などを通して魅力向上に努めたいとしている。

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 南保勝・福井県立大学地域経済研究所長(67)の話 県内には北陸新幹線の駅が四つできる。福井駅を含め個々に再開発が進むが、各駅間の連携が取れていない。行政には限界があるため、県民全員が当事者意識を持つべきだ。新幹線の有効性を高めるには、有力企業や経済団体など民間主体で連携するのが一番望ましい。

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