高齢者の「足」確保へ 自動運転バス・次世代モビリティ

中根勉 佐々木洋輔
[PR]

 住民の高齢化で必要なのに、運転手不足で維持が難しくなっている団地地域での路線バス、運転免許証を返納した高齢者への対応――。こうした高齢者の身近な「足」の確保が課題になっている。桑名市三重県は近い将来を見据え、路線バスの自動運転や次世代モビリティーの活用など、住民を巻き込んだ試みを始めている。

 三重県桑名市の大山田団地で市が群馬大学と共同で進める自動運転バスの実証実験があり、28日までの3日間、団地内を走った。技術的な研究のほか、自動運転について理解してもらうのが目的という。

 国道1号を走った昨年6月に続く2回目の実験。2・5キロの距離を1日10回ほど走り、団地の住民にも体験乗車してもらった。1回目にはなかった上り下りの坂道も走行。法律の関係もあり、プロの運転手が監視しながら運行したが、バスは信号にも対応できる。

 試乗した伊藤徳宇市長は「昨年より走りは順調で坂道も問題ない。地域の理解がなければ自動運転バスの導入は難しい。団地のみなさんに見て感じてもらうことが大切」と話す。

 大山田団地は1970年代から分譲が進んだ県内有数のマンモス住宅地だが、住民の高齢化も進んでいる。外出の足を確保する必要がある一方、バス路線の確保は難しくなっており、市は自動運転の実現に期待している。

     ◇

 運転免許証を返納した高齢者の新たな移動手段について理解を深めてもらおうと三重県は26日、桑名市大山田1丁目の大山田コミュニティプラザで次世代モビリティーの試乗会を開いた。地域住民ら約40人が参加。電動バスと電動カートの乗り心地を楽しんだ。

 県によると、県内の交通人身事故のうち、65歳以上の高齢ドライバーの発生割合は2019年で22・5%。10年の15・5%から毎年増加している。一方、65歳以上の運転免許証の返納数は2012年の803件から19年には8157件と10倍以上増えた。免許返納後の移動手段の確保は、行政の課題になっていて、今回、県が自動車に代わる次世代モビリティーの試乗会を初めて開催した。

 この日登場した次世代モビリティーは、時速20キロ未満の低速で走る定員10人のエコバスと、座って乗る折りたたみ可能な軽量四輪の電動カートの2種類。カートは道交法上は歩行者扱いのため、運転免許や車検などは不要だ。県はエコバスや電動カートを使って、高齢者の自宅から路線バス乗り場や買い物先までの「移動の隙間」を埋めたい考えで、試乗会の感想を参考にし、今後の施策にいかしたいという。

 「ええと思いました。実用化してほしいです」

 参加した近くに住む男性(77)は、試乗後にそう話した。男性は、80歳になる3年後に免許証返納を考えており、その後の「足」について考えようと参加したという。「地域全体が高齢化している。カートなんかは、近所でシェアできるよう整備して欲しい」と感想を話していた。(中根勉、佐々木洋輔)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら