鉄道を「返上」した北海道・夕張 市民「バスで便利に」

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長崎潤一郎
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 JR北海道石勝線夕張支線が2019年4月の廃止から1年を迎える。かつて炭鉱の街として栄えた夕張市は、07年3月の財政破綻(はたん)をへて、鉄路も失った。急速に進む人口減少に直面しながら、新しい街づくりに歩みを進めている。

 JR札幌駅から道東方面に向かう特急列車で約1時間。新夕張駅は、南北に約35キロと長い夕張市の南側の玄関口だ。夕張支線(16・1キロ)の廃止後は、市中心部に向かう公共交通機関は路線バスしかない。

 3月中旬の平日、新夕張駅を午前10時21分に出発するバスに乗った。

 もともと市中心部を走っていたバス路線を、新夕張駅まで延ばして1日10往復運行している。夕張支線は1日5往復だったため、本数は2倍になった。バスは線路とほぼ並行して走り、昔の炭鉱の名残で今も市内に点在する集落を抜けていく。

鉄道は6駅 停留所42カ所

 途中の停留所から乗ってきた女性(72)に話を聞いた。夕張メロンの出荷作業などのアルバイトをしているが、この時期は仕事がなく、友人に会いに行くという。車がないため、病院に行くのも買い物に行くのもバスが頼り。「鉄道は駅まで歩かないといけない。バスが増えて便利になった」

写真・図版

 夕張支線の駅は新夕張駅を含めて六つだった。これに対し、路線バスの停留所は42カ所。郵便局や農協、小学校を約50分かけて回る。新夕張駅では私を含めて2人だった乗客は一時、20人ほどに増えていた。

 バスを運行する夕鉄バス(夕張市)が昨年12月に実施した調査では、新たな市内路線の乗客は1日平均約260人。従来の市内路線と比べて1割ほど増えた。前年の実績を維持するのさえ難しい地方路線では利用者の増加は珍しく、担当者は「鉄道の代わりの交通手段としてバスが受け入れられた」と話す。

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