新幹線の脱線対策、担うのは誰?一部区間でなお手つかず

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細沢礼輝
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 新潟県中越地震(2004年)で起きた上越新幹線脱線事故を教訓に、JR各社が取り組んできた脱線・逸脱防止の安全対策が、東北新幹線北陸新幹線の一部区間で手つかずのままになっている。事故から15年超、同じ新幹線が走る線路で安全に格差が生じる状態がなお続いている。

上越新幹線の脱線事故

2004年10月の新潟県中越地震で、上越新幹線の浦佐―長岡間の高架橋を時速約200キロで走行中の「とき325号」が脱線。そのままレールの締結装置を破壊しながら約1.6キロ走った。10両編成のうち8両が脱線したが、高架橋が倒壊しなかったうえ、車輪と床下機器がレールをはさみ込む格好になったために転覆を免れ、乗客ら154人にけがはなかった。

 新潟県長岡市で起きた脱線事故は、営業運転中の新幹線が初めて脱線した事例だ。JR各社はそれ以降、直下型の地震など早期地震検知システムによる非常停止が間に合わない場合でも、最悪の事態を防ぐための対策に乗り出した。

 すべての新幹線の台車に、脱線後も線路から大きく外れることを防ぐL型ガイドやストッパーを装着した。さらに線路側の対策として、JR東日本JR北海道は、レールが脱線した車両による強い衝撃にも耐えられるようにする転倒防止装置を、JR西日本はレールとは別の逸脱防止ガードを、JR東海JR九州は脱線そのものを防ぐ脱線防止ガードを設置するような取り組みを進めてきた。

 線路側の対策の進み具合を見てみよう。

 JR東日本は東北新幹線の東京―盛岡間と上越新幹線の全線について、大規模な活断層がある地域などを「緊急補強エリア」に指定し、14年度までに対策を完了した。また、小規模な活断層がある地域は20年度末までに、その他の地域も29年度までに対策を終える計画だ。

 JR東海は、東海道新幹線のうち東海地震の被害が想定される静岡県内や高速で通過するトンネル手前などの対策を今月末までに終え、全線でも28年度までに終える計画だ。

 JR西日本は、山陽新幹線のうち新大阪―姫路間の対策を15年末までに終えており、現在は姫路―博多間のうち活断層が確認されている場所を優先して取り組んでいる。

 ところが、東北新幹線の盛岡―八戸間(02年開業、約97キロ)と北陸新幹線の高崎―長野間(1997年開業、約117キロ)は、いずれの対策も未実施のままだ。その上、どこを優先的に取り組むべきかの計画もない。

 なぜ進まないのか。

 原因は、両区間が「整備新幹…

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