石川)北陸新幹線、待望の全線再開 関係者が安堵の声

木佐貫将司 伊藤稔 野田佑介
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 北陸新幹線で東京―金沢の直通運転が再開した。台風19号で寸断された首都圏との大動脈が13日ぶりに戻ったことに、県内の関係者からは安堵(あんど)の声がもれた。

 「ようこそ石川県へ」。25日午前9時前、東京発の始発「かがやき501号」がJR金沢駅に着くと、宿泊業界の関係者や県職員らが横断幕で乗客を出迎えた。和倉温泉の旅館「あえの風」の中女将(おかみ)・長谷川明子さん(55)は「新幹線開業は私たちの夢だったので、運休中は不安だった。運転再開で駅もにぎわいを取り戻せてよかった」と声を弾ませた。

 千葉県成田市から夫婦で訪れた会社員の40代男性は運転見合わせ前に新幹線のチケット付きの旅行プランを申し込んでいたという。「運休が続けば、日程を変えなくてはならなかった。乗れてほっとした」

 兼六園では台風が上陸した翌週の14~18日、来園者が通常よりやや少なめの1日5千人前後で推移していた。石川県金沢城・兼六園管理事務所の藤村秀人所長は「全線開通を歓迎したい。11月には雪吊(づ)りも始まるので、国内外からの来園に楽しんでほしい」と話した。

 だが、新幹線の被災は大きな影を落としそうだ。北陸経済研究所(富山市)は、直通運転の見合わせで石川、富山の両県を訪れる人数は1日あたり2千人減ったと推計し、両県の経済損失は1日あたり最大8千万円に及ぶと試算した。見合わせは10日以上にわたったため、経済損失は8億円を超える可能性がある。

 さらに、同研究所の倉嶋英二・総括研究員は「完全復旧しなければ消費者の心理的には富山、金沢への旅行を控えるかもしれない」と指摘。「紅葉シーズンであることも踏まえると、損失はさらに拡大する可能性もある」という。

 JR西日本金沢支社によると、北陸新幹線は当面、少ない車両で暫定ダイヤを維持するため、観光需要に応じた土日などの臨時列車は運休する。同支社の担当者は「秋の臨時列車の運休が続けば観光への影響は出る」とし、「年末年始は例年以上の混雑が予想される」とみている。

 全線再開までに宿泊のキャンセルが相次いだという金沢駅前のホテルの担当者は「再開はうれしいが、客足が戻ってくるかどうかは読めない。まだ被災地が苦労しているなか、新幹線が動いたからといって関東の方々が旅行に来るか、様子を見ないと分からない」と語った。木佐貫将司、伊藤稔、野田佑介)

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